見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

早稲田大学で半日遊ぶ/考古学と古美術(會津八一記念博物館)

2009-06-07 23:55:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
早稲田大学會津八一記念博物館 『早稲田考古学-その足跡と展望』(2009年5月12日~6月6日)、富岡重憲コレクション開室記念展示『富岡重憲の蒐めたもの』(2009年5月12日~6月29日)

 会津八一記念博物館(※以下、この表記とする)は、話に聴くばかりで一度も行ったことがなかった。この日も「本命」の目的は別の施設にあったのだが、大学正門を入ってすぐ、同館の看板に初めて気づく。あ、ここだったのかあ~と思って、ふらふらと入ってしまった。そうしたら、受付のお姉さんが「今、学芸員のギャラリートークが始まったところですよ!ぜひ!」と熱いおすすめ。「あっ、はい」と、促されるままに展示室に入ってしまった。すると、始まっていたのは、考古学トーク。しまった。私は富岡重憲コレクション(美術品)が見たかったんだけど…慌てたが、後の祭り。しかし、もともと古代史は嫌いじゃないので、けっこう面白く聴かせていただいた。

 印象的だったのは、古墳時代中期の「衝角付冑・頸甲」(カブトとヨロイの一部)。展示品は、宮崎県の樫山古墳から発掘されたものだが、この時期には同じ仕様の武具が全国で発掘されており、強力な中央集権の存在が想定される。さらに同形の武具は、朝鮮半島の伽耶地方でも発見されているという。そうだよね。一目見て、昨年の夏、韓国金海市で見た鉄製の甲冑を思い出した。それから、中国の武具「戈」(→武器図書館)の変遷(より殺傷能力を高く、より生産を容易に)の説明も興味深かった。「映画レッド・クリフでも使われたましたよね」って、やっぱり専門家は小道具が気になるのね。

 ギャラリートークが終わったあと、あらためて目的の富岡重憲コレクション展示室へ。古筆・禅画・茶道具・唐三彩馬など20数点。白隠慧鶴(はくいんえかく)とその弟子、東嶺圓慈(とうれいえんじ)・遂翁元盧(すいおうげんろ)の絵画には、見覚えがあった。遂翁元盧描く、婀娜な大年増みたいな観音様が魅力的。いちばん惹かれたのは、長次郎作の黒楽茶碗『銘・破れ窓』。ざらっとした風合い、ぼってりと厚手の、無骨な黒茶碗である。口縁に小さな方形のひびが入っているのが銘の由来だろうか。隣りに並んだ『織部竹耳水差』も好きだ。上部の緑釉と、下部の銹絵のバランスがとってもいい。しかも、ふとガラスケースに映った影をよく見たら、前面の銹絵は籠目模様だが、裏面は蔓ひょうたんなのである。お見逃しなく!

 さらに2階にも広い展示室(常設展)があって、会津八一が集めた中国の明器(副葬品)や俑(陶器の人形)が多数。その間に八一自身の書や、早稲田大学の収集品である民俗資料やエジプト考古学資料などが混じっていて、かなりカオスな印象で面白かった。それにしても美しい建築だなあと思ったら、もとは図書館で、今井兼次設計の由。建築だけでも一見の価値があると思うのだが、同館のホームページには、全く写真が紹介されていないのがもったいない。
コメント
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