見もの・読みもの日記

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戦士(もののふ)のファンタジー/映画・三国志

2009-06-19 23:48:27 | 見たもの(Webサイト・TV)
○ダニエル・リー監督 『三国志

 昨年、『レッドクリフ PartI』が公開される前から、この映画の情報は耳に入っていて、見に行こう行こうと思いながら、終了直前になってしまった。主人公は、蜀の劉備の軍にあって、関羽・張飛らとともに五虎大将軍の1人に唱えられた趙雲子龍。

 物語では、常山の無名の若者だった趙雲(アンディ・ラウ=劉徳華)が、義勇兵として劉備の軍に参ずる。このとき、腕はからきし立たないが気のいい羅平和(サモ・ハン・キンポー=洪金宝、映画オリジナルキャラ)と知り合い、兄貴と慕うようになる。趙雲は、長坂の戦いで劉備の嫡子阿斗を救い出すなど武功を上げ、北伐のため転戦を重ねる。齢(よわい)六十を過ぎて、五虎大将軍の最後の生き残りとなった趙雲を、軍師孔明は、敢えて魏軍との決戦に送り出した。待ち受けていたのは、曹操の孫娘・曹嬰(マギー.Q、オリジナルキャラ)。決戦場所は、因縁の鳳鳴山。

 私は『三国志演義』の趙雲子龍が好きなので、彼を主人公にした映画が作られると聞いただけで嬉しかった。だが、半分くらい見て、ははあ、これはどうも勝手が違う、ということに気づいた。本作は、基本的には、作者の頭の中に生まれた、ひとりの理想的な戦士(もののふ)の生涯を描くファンタジードラマである。これに、正史『三国志』蜀書趙雲伝や『三国志演義』に描かれた趙雲のエピソードを自由気ままに使いまわしたもの、というのが、たぶん正しい。

 フィクションの骨格は悪くないし、これまでの趙雲のイメージを大きく損ねてもいない。映像も美しい。アクションもなかなか見せる。関羽・張飛役も『レッドクリフ』よりこっちのほうがいいと思う。だが、この作品にズバリ『三国志』のタイトルを付けてしまう配給会社の感覚はいかがなものか(原題は『三国之見龍卸甲』)。物語の背景が『三国志』の時代である必然性は全く感じられない。別に宋でも明でもよかったように思う。いま、歴史(時代劇)がブームであるように見えて、その本質は”キャラ萌え”に過ぎないという傾向は、日本だけではないのかもしれないなあ。

 あと、物語の重要なポイントである甲冑が、どう見てもウソくさくて(日本の武士みたいだという評もあるが…)なじめない。あの鉄兜はないよなあ。鳳鳴山に鎮座する仏像が、興福寺の無著・世親像(どっちだ?)に似ていたのは、悪くなかったけど。

※公式サイト
http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/threekingdom/
コメント
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