見もの・読みもの日記

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キャラメル色の青磁/米色青磁(鎌倉国宝館)

2012-06-13 23:05:05 | 行ったもの(美術館・見仏)
鎌倉国宝館 常盤山文庫名品展2012『特集:米色青磁』(2012年5月31日~7月1日)

 米色青磁というのは、青い青磁と同じ釉薬が、一定の条件下で薄茶色に焼きあがったもので、「稲穂の黄金色」なんて、しゃれた形容をすることもある。私はこの色を見ていると「舐めたら美味そう」という妄想が膨らんでくる。何だっけな、あの昭和のスイーツ、ヨーグルト味のキャンディ…と、週末から考え続けて、そうだ、サクマのキャンロップだ!とようやく思い出した(※画像)。細かい貫入(ひびわれ)は、キャラメルを思わせるところもある。

 解説によれば、南宋官窯の米色青磁は、世界に4点しか知られておらず(全て日本にある)、そのうち3点が常盤山文庫の収蔵品なのだそうだ。とりわけ堂々たる貫禄を示すのが、下蕪形の米色青磁瓶。私は、2011年春、正木美術館の『憧憬 室町の風流』でこの瓶を見て、米色青磁の魅力にやられてしまった。裏側の胴裾の一部がぽっと青く発色している、と解説してあったが、確かめられなかったのが残念。隣りの、大きな灰皿みたいな米色青磁洗は、表面の右端が、確かに青みを帯びていた。そこだけ貫入も少ない。もう1点は、比較的小ぶりな米色青磁杯。

 前後には、格調高い書画の名品も並んでいた。清拙正澄の『遺偈(毘嵐巻)』は、昨年もここ鎌倉国宝館の常盤山文庫名宝展で見たが、私の好きな墨蹟である。南宋の『送海東上人帰国図』は、根津美術館の印象が強い。これもまた人間臭さが好ましい作品。海岸から乗り出すように腕を差しのべる人々を見ていると(見送っているだけなのに)俊寛の逸話を思い出してしまう。

 絵画は、観音図が4件、弁財天図が1件あったが、能阿弥筆『白衣観音図』は、蓮華座に安座した観音が、温泉場の湯けむりの中にいるように見える。もやもやした背景と、観音のキリッとした表情が対比的。宗遠応世筆『白衣観音図』(南北朝)は恬淡とした感じが好き。

 再び陶磁器に戻って、昨年も出ていた北斉時代の三彩、宋赤絵、景徳鎮窯の白磁や青白磁、龍泉窯の青磁など、バラエティに富んでいた。加えて「特別出品」されていたのが、繭山龍泉堂の所蔵する米内山陶片コレクション。根津美術館が『南宋の青磁』を特集したときにも見ているが、外交官の米内山庸夫が、中国駐在中に採集し、日本に持ち帰ったコレクションである。その学術的価値の計り知れなさを嘆賞しつつ、いま外務官僚が駐在地でこんな作業に血道をあげていたら、公私混同だの職務専念義務違反だの言われて、ボコボコに叩かれるだろうなあ、とも思った。ほんと我々は悲しい時代に生きている。
コメント
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