○サントリー美術館 沖縄復帰40周年記念『紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-』(2012年6月13日~7月22日)
紅型(びんがた)とは、沖縄を代表する伝統的な染色技法。琉球王朝時代は王族や貴族の衣装として用いられた。実は、多様な色と形を用いたものがあるのだが、私がすぐにイメージするのは、黄色地に、赤と青(藍)の文様を配した着物である。本展にも、黄色地に鳳凰、蝙蝠などの中国風の吉祥文を描き、赤衿が美しい、琉球国王尚家に伝わる紅型衣裳(国宝)が展示されている。Wikiによれば、黄色は高貴な色で着用出来るのは王族のみと決まっていたそうで、中国文化の影響が感じられる。
ところが、展覧会に行ってみたら、それだけではない。枝垂桜や雪持笹など、日本の伝統文様も使われているし、小紋や絣に似たパターンもある。色合いも、藍・黒のみでまとめたシックなもの(年配者や下級士族向けで藍方[えーがた]と呼ぶ)、藍にわずかな赤・白を差した愛らしいもの、薄桃色、薄紫など柔らかな印象の中間色もあり、私のイメージと知識の貧困さを思い知らされた。
途中に紅型の作り方を紹介するビデオコーナーがあって、30分は長いと思いながら、最後まで見てしまった。第二次世界大戦で多くの型紙や道具が焼失したにもかかわらず、技術者の粘り強い努力によって再興されたという。型紙をつくる→型紙を使って防染糊を置く→染める(豪華なものは、暈しの効果を出すなど、何度かに分けて染める)→糊を洗う(白地はこれで終了)→染め出した文様の上に防染糊を置く→地色を染める→糊を洗う、というような手順だった。
思わず目を丸くしたのは、刃物で型紙を切り出すときの下敷きに、油を塗り、乾燥させた豆腐を使っていたこと。染料を染み込ませる筆は、若い女性の黒髪を細い竹(?)につめて作る。顔料の色止めには豆をすりつぶした豆汁を使っていた。材料も道具も、まわりの豊かな自然から貰っていることが印象的だった。
ビデオの後半では、筒描き(つつがき)が紹介されていた。防染糊を置く→染めるという手順は紅型と同じだが、型紙を用いず、チューブから防染糊を絞り出すようにして、フリーハンドで文様を描くというもの。ああ、サントリー美術館が赤坂にあった頃、「筒描き」の特集展示を見に行ったことが記憶にある。
琉球の伝統文化には知識が乏しいので、着物の仕立ての解説も、いろいろ気になった。袖口が切り落とし(耳)になっている方が、折り返して縫い止めてあるものより格が高いとか。紅型の衣装には、丈の長いもの(打掛け)と短いものがある。短いものはドウジンと呼ばれる胴衣で、下にカカンと呼ばれるスカート(裳)を穿く。なるほど、古代的というか、半島・大陸仕様なんだな。素材は、木綿または苧麻(ちょま、カラムシ)が一般的。染めは鮮やかだが、裏が透けるほど薄地で、涼しそうだというのも、近くで見て、はじめて分かった。あ、でも、ちゃんと冬物もあった。
形染めした布を並べて後ろ身頃にする場合、左右の文様の向きを揃えたものと、線対称に合わせたものとがある。後者は、思わぬダイナミックな文様が出現することがあって、面白かった。
ちょうど先週、ドラマ『テンペスト』の地上波再放送が終わったところで、画面で見た紅型衣装の数々を思い出しながら、本展を見ることができた。沖縄、また行きたい…。
紅型(びんがた)とは、沖縄を代表する伝統的な染色技法。琉球王朝時代は王族や貴族の衣装として用いられた。実は、多様な色と形を用いたものがあるのだが、私がすぐにイメージするのは、黄色地に、赤と青(藍)の文様を配した着物である。本展にも、黄色地に鳳凰、蝙蝠などの中国風の吉祥文を描き、赤衿が美しい、琉球国王尚家に伝わる紅型衣裳(国宝)が展示されている。Wikiによれば、黄色は高貴な色で着用出来るのは王族のみと決まっていたそうで、中国文化の影響が感じられる。
ところが、展覧会に行ってみたら、それだけではない。枝垂桜や雪持笹など、日本の伝統文様も使われているし、小紋や絣に似たパターンもある。色合いも、藍・黒のみでまとめたシックなもの(年配者や下級士族向けで藍方[えーがた]と呼ぶ)、藍にわずかな赤・白を差した愛らしいもの、薄桃色、薄紫など柔らかな印象の中間色もあり、私のイメージと知識の貧困さを思い知らされた。
途中に紅型の作り方を紹介するビデオコーナーがあって、30分は長いと思いながら、最後まで見てしまった。第二次世界大戦で多くの型紙や道具が焼失したにもかかわらず、技術者の粘り強い努力によって再興されたという。型紙をつくる→型紙を使って防染糊を置く→染める(豪華なものは、暈しの効果を出すなど、何度かに分けて染める)→糊を洗う(白地はこれで終了)→染め出した文様の上に防染糊を置く→地色を染める→糊を洗う、というような手順だった。
思わず目を丸くしたのは、刃物で型紙を切り出すときの下敷きに、油を塗り、乾燥させた豆腐を使っていたこと。染料を染み込ませる筆は、若い女性の黒髪を細い竹(?)につめて作る。顔料の色止めには豆をすりつぶした豆汁を使っていた。材料も道具も、まわりの豊かな自然から貰っていることが印象的だった。
ビデオの後半では、筒描き(つつがき)が紹介されていた。防染糊を置く→染めるという手順は紅型と同じだが、型紙を用いず、チューブから防染糊を絞り出すようにして、フリーハンドで文様を描くというもの。ああ、サントリー美術館が赤坂にあった頃、「筒描き」の特集展示を見に行ったことが記憶にある。
琉球の伝統文化には知識が乏しいので、着物の仕立ての解説も、いろいろ気になった。袖口が切り落とし(耳)になっている方が、折り返して縫い止めてあるものより格が高いとか。紅型の衣装には、丈の長いもの(打掛け)と短いものがある。短いものはドウジンと呼ばれる胴衣で、下にカカンと呼ばれるスカート(裳)を穿く。なるほど、古代的というか、半島・大陸仕様なんだな。素材は、木綿または苧麻(ちょま、カラムシ)が一般的。染めは鮮やかだが、裏が透けるほど薄地で、涼しそうだというのも、近くで見て、はじめて分かった。あ、でも、ちゃんと冬物もあった。
形染めした布を並べて後ろ身頃にする場合、左右の文様の向きを揃えたものと、線対称に合わせたものとがある。後者は、思わぬダイナミックな文様が出現することがあって、面白かった。
ちょうど先週、ドラマ『テンペスト』の地上波再放送が終わったところで、画面で見た紅型衣装の数々を思い出しながら、本展を見ることができた。沖縄、また行きたい…。