見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

管弦の遊び/天理大学雅楽部 北海道公演(札幌)

2013-08-07 21:08:29 | 行ったもの2(講演・公演)
札幌市教育文化会館 『天理大学雅楽部 北海道公演』(2013年8月6日、18:30~)

 東京にいたときから、機会があるごとに雅楽公演を見てきた。天理大学雅楽部の存在は、もちろん知らないわけはないので、ときどきホームページを覗いて、東京公演ないかな~とチェックをしていた。しかし、なかなか観覧の機会にめぐまれないままでいたら、先月、札幌市内某所で、この公演のポスターを見つけて、びっくりした。

 18:30の開演に間に合うように職場を飛び出すのは気が引けるが、なんとかなるだろう。しかし、北海道で雅楽公演なんて、お客は入るんだろうか?と余計な心配をしていた。それが行ってみたら、大ホール(1,100席)「完売です!」という会話が聞こえた。2階席の上のほうは少し空いていたかもしれないが、確かによく入っていた。全席自由で、私が入場したときは、まだ1階に探せば空席があったが、全体のフォーメーションが見えたほうが楽しいだろうと思い、2階の最前列に座ることにした。

 プログラムは、伎楽「迦楼羅」、管弦「越天楽」「陪臚」、謡物(催馬楽)「我家(わいえ)」、舞楽「納曽利」「太平楽」と、バラエティに富んだ構成。札幌在住のOBだというおじさんが舞台袖に上がって、各演目の簡単な解説をつとめた。実は、プログラムに佐藤浩司先生のお名前があったので、昨年の国立劇場での伎楽公演と同様、解説なさるのかな、と思って、楽しみにしていたら、さっきtwitterで「軽度の脳梗塞の為検査入院」というつぶやきを見た。では、あのOBのおじさんはピンチヒッターだったのかしら。「天理大学雅楽部の北海道公演は40年ぶりです」という言葉に、奇縁を感じた。

 伎楽「迦楼羅」は復元曲なんだろうな。子供にもわかる単純な所作芝居。10人ほどの楽隊が、舞台の下手に整列して楽を奏する。二人の農夫(紙か布の仮面)が畑を耕していると、イタズラものの迦楼羅が作物を食い荒らしにくる。毘沙門天が現れて、迦楼羅を改心させ、以後、悪虫を退治する益鳥(霊鳥)となる。という説明だったが、現れたのが、二人の巨漢(金剛力士?)を左右に従えた、白髪眉のおじいちゃん(太孤父)だったので「?」と思った。あの腰の曲がったおじいちゃんが毘沙門天の化身という設定らしい。伎楽は舞台を踏み鳴らす音が所作のアクセントになっていて、そこが舞楽と異なるように思った。

 管弦で場面転換。周囲に朱の欄干が巡らされる。舞台上には15、6人が、色とりどりの直衣姿で座す。背景が青一色なので、海の底の平家一門みたいだなあ、などと妄想する。「音取」に続いて、ゆったりした「越天楽」と、いくぶん調子の早い「陪臚」を演奏。

 場面転換して謡物(うたいもの)。楽人は後方に退き、前方には鶴翼の形に10人ほどが並ぶ。中央の1人が笏拍子を鳴らしてリズムを取りながら、催馬楽「我家」を唄う。のびのある男声が耳に心地よかった。歌詞は全く聞き取れなかったが、源氏物語にも登場する「大君来ませ、婿にせむ」という、あれのことか。もう少しくつろいで唄ってくれてもよかったのに。曲数ももっと聞きたかった。

 ここで15分休憩。第二部は舞楽。舞台の左右に楽人。最初は、右方(高麗楽)の「納曽利」。装束は黄色の袍に、緑色の裲襠(りょうとう、モコモコした房のついたエプロンみたいなもの)を付ける。ぴょこぴょこ飛び跳ねる様子がかわいい。続いて、左方(唐楽)の「太平楽」。昨年、東京の国立劇場で見た『四天王寺の聖霊会』のフォーメーションと、少し違うような気がしたのだが、単に私の気のせいかしら。この曲は、芸術的に完成された熟練の舞人よりも、多少雑なくらい元気な若人が舞うほうが、覇気が感じられていいと思う。隣りの席にいた小学生くらいの男子が、目を輝かせて見ていた。そうだよね、カッコいいって思うよね。最後に「長慶子」を奏して、しみじみと幕。

 北海道公演は、このあと小樽、函館、旭川と続く。ぜひまた来年も札幌に来てほしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする