見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

秘境の隣人/NHKスペシャル・シリーズ「深海の巨大生物」

2013-08-10 23:45:19 | 見たもの(Webサイト・TV)
○NHKスペシャル シリーズ「深海の巨大生物」(NHKオンデマンド)

 四月から札幌に移住して、いろいろ生活が変わった。宿舎でBSが見られることが分かって、テレビ視聴の機会が増えた。世間で話題の朝ドラ『あまちゃん』とかTBS『半沢直樹』を私も見ている。その波及で、NHKオンデマンドも「見逃し見放題パック」(月額945円)を契約してしまった。表題のシリーズは、

第1回「伝説のイカ 宿命の闘い」7月27日(土)19:30~
第2回「謎の海底サメ王国」7月28日(日)21:00~

と題して放送されたもの。この週末は東京に所用があって見られなかったが、オンデマンド配信で見ることができた。そうすると欲が出て、今年のはじめに見逃していた、

世界初撮影!深海の超巨大イカ」1月13日(日)21:00~  

もオンデマンドで視聴してしまった。もうね、これだけ視聴習慣が変わってくると、放送をリアルタイムに見ている視聴者だけを数える「視聴率」って、意味をなさないのではないかと思う。そして、テレビを見る人は減ったというけれど、ドラマでもドキュメンタリーでも、やっぱり私たちは、面白い番組を待っているのだ。

 このシリーズは、文句なく面白かった。世界で初めて撮影されたというダイオウイカの映像のインパクト。またその映像が、どんなSF作家にも演出家にも作り出せないくらい、美しいし神秘的だし(あのメタリック・ゴールド、大きな目)。あ、でも久石譲の音楽は、映像の魅力を三割増しくらいにしているかもしれない。

 このプロジェクトに参加した科学者たちの、生き生きした表情も印象的だった。深海生物の出現や撮影に立ち会ったときの、子どものように無邪気な喜びかた。好きなことを仕事にするって、こういう表情をつくるんだな、と思った。とりわけ、40年にわたってダイオウイカを追ってきた窪寺恒己博士が潜水艇に乗り込み、ついに23分間、生きたダイオウイカとの邂逅を果たしたあと、チームメイトが拍手で迎えるシーンは感動的だった。窪寺博士と同様に、未知の何かのために人生を捧げている研究者が、世界中にいるんだろうな。そういう時間のかかる基礎研究を「税金の無駄遣い」で切り捨てないでほしいな…。

 私は子どもの頃、ジュール・ベルヌの『海底二万里』が大好きで、繰り返し貪り読んだ。ベルヌの作品の中では一番好きだったと思う。科学と虚構がほどよくブレンドされた「現実味のある空想科学小説」だったし。一方で登場人物には、子供心に謎を残す複雑な陰影があった。ノーチラス号が遭遇する巨大生物は、原文では「タコ」と「イカ」が混用されているという。私が読んだ本も、あるものは「イカ」、あるものは「タコ」になっていたと思う。

 それにしても、ダイオウイカの出現ポイントが小笠原諸島沖にあるとか、深海ザメの王国が駿河湾・相模湾にあるとか聞くと嬉しくなる。石油や鉱物資源があると聞くより嬉しい。どうか日本人が、この貴重な隣人と末永く付き合っていけますように。
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五彩手の素朴美/出光美術館 日本陶磁名品選(苫小牧市美術博物館)

2013-08-10 22:08:54 | 行ったもの(美術館・見仏)
苫小牧市美術博物館 開館記念『出光美術館 日本陶磁名品選-江戸時代前期の多彩な装飾世界-』(2013年7月27日~8月25日)

 札幌から鉄道で約1時間。はじめて苫小牧市を訪ねてみた。同館は、もと苫小牧市博物館と呼ばれていた施設を、先月、美術館機能を併せ持つ複合施設としてリニューアル開館したばかりらしい。この展覧会は、出光美術館が所蔵する江戸時代前期の色絵磁器を、古九谷を中心に70点余り展示するもの。ああ~やっぱり素晴らしかった。

 東京の出光美術館が「古九谷」を特集したのは、調べてみたら、2004年(古九谷-その謎にせまる-)だった。私にとっては、日本のやきものって面白い!という出発点になった展覧会で、強く記憶に残っている。当時、私が特に惹かれたのは、大胆な意匠の「青手」だが、今回は、冒頭の「五彩手」に魅入られた。はじまりは、中国の青花芙蓉手や呉須手をモデルに幾何学的な区画を重んじ、緑・黄・青・紫・赤の五彩に塗り分ける格調高いデザインだったものが、次第に山水・人物・花鳥などを自由奔放に描く「雅味ある意匠」に転じていく。

 いやほんとに鳥や小動物が可愛い。無人の山水図も可愛い。時間をかけて丁寧に可愛く描こうとしていないのが、ゆるくてかわいい。「つきしま かるかや」的素朴美である。もしかして東京の出光美術館では、数々の名品の影に隠れて、なかなか出番のない作品が来ているのではないかしら。そうだとしたら、逆に得をした気分。

 裏面に「承応弐歳」(承応二年)という銘を持つ作品が2件。ひとつは、牡丹のような八重の梅を赤一色(枝は黒)で描いた、ちょっと西洋風のデザインの五客揃いの角皿だった。4代家綱の時代で、17世紀の中葉である。

 最も古九谷らしいデザイン(と私が考える)「青手」は20点ほど。青い太湖石の上に片足立ちした鳥が、牡丹の葉をついばむデザイン、記憶になかったけど、面白いと思った。虎文は戸栗美術館のマークを思い出した(あれは染付?)。斬新なデザインに見覚えがあって、あっ西瓜文!と思った大皿は、出品リストをよく見たら「南瓜文」とあった。長円型の縞模様の実で、中国でよく見るスイカに似ているのだが。

 「赤絵」が10点ほど。色絵梅竹酒瓶は、余白の広さが柿右衛門を思わせる。細い頸の部分の文様の処理がオシャレ。最後に、瑠璃釉、鉄釉などを少しずつ。本物の古典美にひたれて、楽しいひとときだった。
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