見もの・読みもの日記

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異界に出会う夏/大妖怪展(三井記念美術館)

2013-08-30 21:41:38 | 行ったもの(美術館・見仏)
三井記念美術館 特別展〈美術の遊びとこころVI〉『大妖怪展-鬼と妖怪そしてゲゲゲ』(2013年7月6日~9月1日)

 大好きな、大好きな妖怪画と幽霊画の展覧会をハシゴ。それにしても、三井記念美術館で妖怪展とは意表を突かれた。いつもはお茶や書画骨董趣味のハイソなおばさま・おじさまの集う同美術館に、好奇心満々の子どもたちが詰めかけていて、なんだか楽しい。

 展示室1、2は、妖怪を描いた浮世絵。歌川国芳、月岡芳年の「外せない」名品が並ぶ。展示室3には「外道を調伏する安倍晴明」のフィギュア。『不動利益縁起絵巻(泣不動縁起絵)』を立体に起こしたものだ。国立歴史民俗博物館がこれを作ったのは、たぶん2001年の企画展示『異界万華鏡』で(※写真あり)、見たときは心の中で大拍手してしまった。そのあと、江戸博の『大(Oh!)水木しげる展』にも貸し出されていたような気がする。後世に残る仕事だと思う。

 面白かったのは、展示室4。三井記念美術館所蔵の能面の名品に、それが使われる謡曲のあらすじ、関連する絵巻物や絵画作品をあわせて展示。ふだん「古典」と思って敬遠しがちな能面も「鬼と妖怪」のフレームに置いてみると、子供たちも食い入るように眺めている。能面の「天神」「顰(しかみ)」とか、怖いよねえ。単なる暴力性でなくて、狂気に近いものが感じられて、怖いのだ。「大飛出」とか。逆に癋見(べしみ)は天狗の役に使うそうだが、素朴な力強さの中に愛嬌があって好きだ。あと男の鬼神には角がないのに、鬼女の「蛇」「般若」には角があるのは不思議。謡曲のあらすじも、読んでみると、奇談・怪談好きの私の琴線に触れるものが多いなあ。

 展示室5は、近世の百鬼夜行図や化物尽くしの諸本を並べていたが、愛知県の西尾市岩瀬文庫からの出品が多いことが目を引いた。色鮮やかな善本多し。所蔵品のデータベース化が一段落して、こういう有効活用ができるようになったんだな、と感慨深く感じた。

 最後の展示室は、水木しげる氏の描く妖怪画。私は、素直に妖怪を信じていた子ども時代も、生意気盛りの中高生時代も、長じてからも、ずっと水木しげるファン(かつ妖怪大好き!)なので嬉しかった。精密なペンタッチに繊細な色彩を施した「河童」の図は、中学生の頃、横長の『妖怪事典』シリーズで印刷図版を見て以来のお気に入り。半ば異界の住人となっているとも言われる水木先生だが、どうぞいま少し人間界にとどまっていてください。
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