見もの・読みもの日記

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2014年3月@滋賀:近江三都物語(安土城考古博物館)

2014-03-22 01:19:00 | 行ったもの(美術館・見仏)
滋賀県立安土城考古博物館 冬季特別展『近江三都物語-大津宮・紫香楽宮・保良宮-』(2014年2月8日~4月6日)

 修二会(3/14)聴聞の翌日、遅く起きて、遠路を滋賀県に向かう。同館には、これまで二回、JR安土の駅から歩いていった(約20分)。駅前からレンタサイクルという手もあるのだが、経験者の話では「風が寒くてキツイ」とのこと。しかし、この日の私は、マフラーに手袋、防寒ブーツという北海道仕様だったので、はじめてレンタサイクルを利用してみた。自転車に乗るのも久しぶりで(何年ぶりだ?!)ドキドキしたが、無事に到着。サイクリングロードはよく整備されていて、快適だった。

 特別展は1室のみの小規模な展示で、考古発掘の紹介だから、どうしても現物資料より写真パネル等が多くなるのだが、古代史の近江好きの私には、十分楽しめる内容だった。『藤氏家伝』には「近江国者、宇宙有名之地」という一句があるのか。ちょっと嬉しい。瀬田の橋は、古代から何度も戦場となった交通の要所だが、今回、模型を見て「橋のかけかた」が初めて呑み込めた。橋脚の基礎工法って、こんなふうになっていたのか。「唐橋」と呼ばれるのも然りで、やはり近江には、渡来系氏族の先進文化・先端技術が根づいていたことを感じさせる。古代の先端技術を支える資源として、鉄はもちろん、杣(そま)すなわち森林資源があったことを忘れてはならない。これは、玉木俊明著『近代ヨーロッパの誕生』を読んだときも教えられたな。「森林」の有無が、国の繁栄を支えるバックボーンだったということを。

 近江崇福寺跡から出土した舎利容器は、青瑠璃(濃緑色のガラス)の小壺の透け具合が素晴らしく美しいのだが、ポスターの写真は、その美しさが表現されていなくて残念。清朝の鼻煙壷にも似ている。藤原仲麻呂と関係する官衙や寺院に限って出土する飛雲文の瓦というのも面白い。発掘品に基づく「大織冠」の復元品というのは、あまりにも意外で、笑ってしまった。サンタクロースの帽子みたいだ。画像検索をかけたら、頭上の半ばを絞るようにすれば、見慣れた冠に近いものになるが、そのまま被ったら、胡人の仮装である。

 大津宮や紫香楽宮の位置や規模が分かってきたのは近年(戦後)のことで、淳仁天皇の保良宮はまだ確定していないらしい。地道な研究の積み重ねが必要なのだろう。近江国が歴史の表舞台にあった古代動乱の時代が、私はとても好きなのだが、展示のエピローグのパネルが、近江は内陸に入りすぎていて、都城を築くには土地狭隘であったことなどを挙げ、「残念ながら近江には権力にとって主たる舞台の役割を長く果たすことができなかったのである」と淡々と結んでいるのが、何だか微笑ましかった。いや、だからこそ古いもの(特に敗れたものの記憶)が残っている土地柄で、私は惹かれるのだ。
コメント
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