見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

漢籍(国立公文書館)と古写真(JCIIフォトサロン)

2014-03-02 21:57:20 | 行ったもの(美術館・見仏)
国立公文書館 平成25年度 連続企画展 第6回『江戸幕府を支えた知の巨人-林羅山の愛読した漢籍-』(2014年2月7日~3月15日)

 国立劇場の舞楽公演(2月22日)開演まで、少し時間があったので、近場の展覧会に寄っていくことにした。まず竹橋の国立公文書館。林羅山(1583-1657)と言えば、方広寺梵鐘銘「国家安康」の件が思い浮かび、好感を持っていなかったのだが、今回の展示で、なかなか愛すべき大学者であることが分かった。少年時代は京都・建仁寺で仏教を学ぶ。寺を出てからは書写などによって書物の蒐集に努め、22歳のときには「四百タイトル以上もの蔵書を保有するまでになっていました」とパネルにあったけど、この数字、当時の「読書家(蒐集家)」の基準を表していて、興味深い。

 紅葉山文庫を通じて国立公文書館(内閣文庫)に残された羅山の蔵書には、『本草綱目』『群書治要』などスタンダードな漢籍がある一方で、『棠陰比事』(名裁判物語集)とか『狐媚叢談』(キツネ怪異譚集)などもあって、面白い。『剪灯新話』(牡丹灯籠で有名)も。以前、『閲微草堂筆記』の著者・紀(きいん)先生について「大学者の怪談好き」と書いたことがあったが、羅山にも同じ傾向があったみたい。青年時代の森鴎外もそうだ。漢文で読む怪異譚って、文体が簡潔なだけに、逆に想像力を刺激されるのかもしれない。Wikiの林羅山の項目には、明暦3年(1657)の大火で邸宅と書庫を焼失し「その4日後に死去した。書庫が焼失した衝撃と落胆で命を縮めたともいわれている」とあるが、全ての蔵書を失ったわけではないのね。よかった。

 特別展ではないので、展示図録は貰えないが、写真撮影は自由。こういう展示会もありがたいと思う。

JCIIフォトサロン 『古写真に見る明治の東京-下谷区編』(2014年2月4日~3月2日)

 まだ少し時間があったので、半蔵門の日本カメラ博物館に立ち寄る。写真展示(無料)をやっているのは隣接するJCIIフォトサロンなのだが、つい間違ってカメラ博物館(300円)に入館してしまい、特別展『世界のライカ型カメラ-小型精密カメラの進化と発展-』(2014年3月11日~6月22日)を見て行く。以前も同じ間違いをした記憶がある。

 さて、この古写真シリーズは27回目だという。同館所蔵の『大日本東京寫眞名所一覧表』と題された2冊の写真帖の中の「下谷区之部」より約80点を展示。「皇城(江戸城)・麹町区編」「神田区・日本橋区編」「京橋区編」「芝区・麻布区・赤坂区編」「浅草区編」「牛込区・小石川区・本郷区編」に続く第7弾。え~私は古写真にかなり興味があるつもりだったが、この展覧会はずっとノーチェックだった。

 今回の「下谷区編」には、いまの上野公園周辺の風景の古写真がたくさんあって、興味深かった。木下直之先生の近著『戦争という見世物』にも登場する上野の大仏や不忍池競馬場、上野動物園の動物たち、さらには、以前、藤森照信先生の講演で紹介された初代の国立博物館(イスラム建築風!)の写真もあった。

 貴重な展示図録は、もちろん買ってきた。「下谷区編」以外の図録も残部があって、全部欲しかったが、とりあえず「神田区・日本橋区編」(大学南校、一ツ橋の東京大学(法理文学部)などの写真あり)「京橋区編」(海軍兵学校の写真あり)「牛込区・小石川区・本郷区編」(東京女子師範学校、東京大学医学部や法文科大学の写真あり)を加えて、計4冊を買っていくことにした。こういう資料は、近くの図書館にまず期待できないから、自腹で買い揃えておくに限る。これ以外も欲しくなったときのために確かめたら、普通の書店では取り扱っていないが、JCIIのホームページから通信販売は申し込めるそうだ。
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