■根津美術館 特別展『動物礼讃:大英博物館から双羊尊がやってきた!』(2015年1月10日~2月22日)
東博のあとは根津美術館へ。何だか動物モチーフを扱った絵画・工芸の展覧会らしい、ということしか把握していなかった。最初の展示室には、古代中国の青銅器がたくさん。おや珍しいと思ったら、どれも泉谷博古館の収蔵品だった。人気者の『虎卣(こゆう)』も来ていた。泉谷博古館のホームページのバナーの右端に載っている青銅器である。
展覧会の呼び物は、根津美術館所蔵の『双羊尊』と大英博物館所蔵の『双羊尊』のご対面。基本的な造形は瓜二つ。根津美術館のほうが、おっとりと気弱そうな表情で、大英博物館のほうが、角の巻き上がり方が堂々としており、あご下にヒゲも見られる。これまで、同時代に殷王朝下(つまり河南省か)で作られたとみなされていたが、最近は、湖南省で、しかも異なる時代に作られたと考えられているそうだ。また、中国(秦~元)の銅鏡もたくさん出ていた。根津美術館のもので、村上英二氏寄贈のコレクションだというが、まとまって見た記憶がなくて、興味深かった。
絵画は『十二因縁絵巻』が久しぶりに見られて嬉しかった。今回は妖艶な女性の姿の羅刹がいた。賢江祥啓筆『人馬図』2幅は、白い服の男性と黄色い馬(栗毛?)、水色の服の男性と薄墨色(葦毛?)の馬を描く。どちらも足元の白い「四白」。四白は凶馬の相である、と『新・平家物語』にあるそうだが、典拠はあるのかな。動物をかたどった香炉、香合、置物なども可愛かった。根津美術館、いろんなものを持っているなあ。油をねらうネズミを表した『鼠短檠(たんけい)』は、からくり式の灯明台。『桜下麝香猫図屏風』の前に置いてあるのが、ユーモラスで可愛かった。
さて、展示室5では、伝・狩野山楽筆『百椿図』2巻を一挙公開中。さまざまな園芸種の椿を描いた百の図に、それぞれ賛(多くは漢詩。和歌もあり)がついている。最多の賛を寄せたのが林鵞峰。その父・林羅山や息子・林鳳岡の名前も見えて、昨年読んだ『江戸幕府と儒学者』を思い出し、急に興味が湧いてしまった。北村季吟や松永貞徳などの和学者と仲良く共演しているんだな。椿の飾り方百態も見どころなのだが、ふつうの花瓶や桶だけでなく、冊子本に挟んだり、風呂敷に包んだり、聖護院大根に刺したものまであって、発想の自由さに笑った。
■出光美術館 『物語絵-〈ことば〉と〈かたち〉』(2015年1月10日~2月15日)
屏風、絵巻、色紙など、形態は違えど、古物語に基づいて制作された絵画作品を集めたコレクション展。こういう展覧会を見ると、自分が日本文学を専攻して、ひととおりの古物語の粗筋を知っていてよかったと思う。源氏絵を見ても、どの巻のどの場面であるか、絵の中の人物関係を含めて、まあ八割方は分かる。分かるだけに、江戸時代の岩佐勝友の『源氏物語図屏風』では、男女の距離が近過ぎたり、男たちが荒くれっぽくて笑ってしまう。須磨の巻には虎の皮の腰巻の雷神がいるし、柏木には山伏みたいのがいた。
『西行物語絵巻』はいいなあ。宗達の真筆の中で、唯一年紀が明らかな作品だというが、あまり宗達らしさを感じない。絵画表現の個性を抑えて、物語世界に寄り添った作品なのかもしれない。逆に物語が遠景に引いて、純粋絵画作品として好きなのは、光琳の『伊勢物語 禊図屏風』である。
東博のあとは根津美術館へ。何だか動物モチーフを扱った絵画・工芸の展覧会らしい、ということしか把握していなかった。最初の展示室には、古代中国の青銅器がたくさん。おや珍しいと思ったら、どれも泉谷博古館の収蔵品だった。人気者の『虎卣(こゆう)』も来ていた。泉谷博古館のホームページのバナーの右端に載っている青銅器である。
展覧会の呼び物は、根津美術館所蔵の『双羊尊』と大英博物館所蔵の『双羊尊』のご対面。基本的な造形は瓜二つ。根津美術館のほうが、おっとりと気弱そうな表情で、大英博物館のほうが、角の巻き上がり方が堂々としており、あご下にヒゲも見られる。これまで、同時代に殷王朝下(つまり河南省か)で作られたとみなされていたが、最近は、湖南省で、しかも異なる時代に作られたと考えられているそうだ。また、中国(秦~元)の銅鏡もたくさん出ていた。根津美術館のもので、村上英二氏寄贈のコレクションだというが、まとまって見た記憶がなくて、興味深かった。
絵画は『十二因縁絵巻』が久しぶりに見られて嬉しかった。今回は妖艶な女性の姿の羅刹がいた。賢江祥啓筆『人馬図』2幅は、白い服の男性と黄色い馬(栗毛?)、水色の服の男性と薄墨色(葦毛?)の馬を描く。どちらも足元の白い「四白」。四白は凶馬の相である、と『新・平家物語』にあるそうだが、典拠はあるのかな。動物をかたどった香炉、香合、置物なども可愛かった。根津美術館、いろんなものを持っているなあ。油をねらうネズミを表した『鼠短檠(たんけい)』は、からくり式の灯明台。『桜下麝香猫図屏風』の前に置いてあるのが、ユーモラスで可愛かった。
さて、展示室5では、伝・狩野山楽筆『百椿図』2巻を一挙公開中。さまざまな園芸種の椿を描いた百の図に、それぞれ賛(多くは漢詩。和歌もあり)がついている。最多の賛を寄せたのが林鵞峰。その父・林羅山や息子・林鳳岡の名前も見えて、昨年読んだ『江戸幕府と儒学者』を思い出し、急に興味が湧いてしまった。北村季吟や松永貞徳などの和学者と仲良く共演しているんだな。椿の飾り方百態も見どころなのだが、ふつうの花瓶や桶だけでなく、冊子本に挟んだり、風呂敷に包んだり、聖護院大根に刺したものまであって、発想の自由さに笑った。
■出光美術館 『物語絵-〈ことば〉と〈かたち〉』(2015年1月10日~2月15日)
屏風、絵巻、色紙など、形態は違えど、古物語に基づいて制作された絵画作品を集めたコレクション展。こういう展覧会を見ると、自分が日本文学を専攻して、ひととおりの古物語の粗筋を知っていてよかったと思う。源氏絵を見ても、どの巻のどの場面であるか、絵の中の人物関係を含めて、まあ八割方は分かる。分かるだけに、江戸時代の岩佐勝友の『源氏物語図屏風』では、男女の距離が近過ぎたり、男たちが荒くれっぽくて笑ってしまう。須磨の巻には虎の皮の腰巻の雷神がいるし、柏木には山伏みたいのがいた。
『西行物語絵巻』はいいなあ。宗達の真筆の中で、唯一年紀が明らかな作品だというが、あまり宗達らしさを感じない。絵画表現の個性を抑えて、物語世界に寄り添った作品なのかもしれない。逆に物語が遠景に引いて、純粋絵画作品として好きなのは、光琳の『伊勢物語 禊図屏風』である。