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見もの・読みもの日記

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そして新緑に向かう/桜 さくら SAKURA 2018(山種美術館)

2018-04-18 23:52:27 | 行ったもの(美術館・見仏)
山種美術館 企画展『桜 さくら SAKURA 2018-美術館でお花見!-』(2018年3月10日~5月6日)

 「このたび、山種コレクションの中から、桜が描かれた作品を厳選し、一堂に公開する展覧会を6年ぶりに開催いたします」という開催趣旨を読んで、おやそんなに久しぶりだったか、と軽く驚く。奥村土牛の『醍醐』をはじめ、山種コレクションには好きな桜の絵がたくさんあって、だいたいこの時期に見せてもらっている気になっていた。調べたら、昨年は『花*Flower*華』で、その前はズバリ『奥村土牛』展だったのだな。

 はじめのテーマは「名所の桜」。東山魁夷の『鷹ヶ峰』は京都・鷹ヶ峰だという。緑一色の常緑樹の山を背景に一本だけ白い桜の木が立っている。小林古径の『入相桜』は和歌山・道成寺の桜だ。小林古径の『弥勒』は奈良・室生(大野寺)の摩崖仏の前に咲く桜。石田武『千鳥ヶ淵』は、目を凝らすと桜の枝の背景に水面がにじんでいる。奈良・吉野山は、レースのような花の集まりを一輪ずつ丁寧に描いた石田武の『吉野』も好きだし、刷毛で引いたような、桜色の霞がたなびく奥村土牛の『吉野』も好きだ。橋本明治の『朝陽桜』は花の向きと大きさを揃えて、工芸的にデザインされているが、福島・三春の滝桜を描いたものだと初めて知った(ちなみに「滝」はの名前だということも)。そして土牛の『醍醐』は何度見てもいいが、今年は醍醐寺の桜を見てきたので、感慨ひとしおだった。

 展示室の奥に進んでハッとした。いちばん奥の壁面に掛かっていたのは、奥田元宋の大作『奥入瀬(春)』で、したたるような新緑が、まわりの空気まで緑色に染めている。え、桜?と思ったが、よく見ると、新芽の出かかった花の枝が、緑の中に混じっている。それにしても全体を印象づけるのは、泡立つ急流の白と若葉の緑。よく見ると、緑陰の隙間に金色がサッと塗られていて、木洩れ日の輝きを感じさせる。左隣りの土田麦僊『大原女』も緑が印象的な作品で、これなら五月になっても大丈夫(?)だと思った。

 続いて、歴史や文学上の人物に配した桜の絵が並ぶ。私はこのエリアの作品が大好き、守屋多々志の『聴花(式子内親王)』は、満開の墨染桜の下に御所車と女房装束の女性の姿。白い衣から袖口の紅がこぼれる。伊東深水の『吉野太夫』、森田曠平の『百萬』、羽石光志の『吉野山の西行』も好き。松岡映丘の『春光春衣』は、源氏絵や紫式部日記、扇面法華経絵など複数の古典作品を参考にして、藤原時代(平安時代)の貴女を描いたものだというが、私はすぐに平家納経を思い出してしまい、諸行無常の声を聞く平家の女人たちとしか思えなかった。

 人の姿のない、小茂田青樹『春庭』も好き。小野竹喬の『春野』は、竹喬にしては写実的だが色のメリハリが美しい。第2室は夜桜特集で、部屋の暗さが効果的だった。月がいくつも出ていて、夜桜を描くと月を添えたくなるのだな、と思った。

 このあと、国学院博物館に寄って、企画展『吉田家:神道と典籍を伝えた家~國學院大學図書館所蔵吉田家旧蔵資料~』(2018年3月3日~4月15日)の最終日に滑り込む。吉田神道って、仏教や儒教の影響が強く、あやしいものであることだけは分かった。
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