見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

お土産はターキッシュ・ディライト/トルコ至宝展(国立新美術館)

2019-04-07 22:45:59 | 行ったもの(美術館・見仏)

国立新美術館 『トルコ至宝展:チューリップの宮殿、トプカプの美』(2019年3月20日〜5月20日)

 2019年は「日本におけるトルコ文化年」だそうだ。これを記念して、オスマン帝国の栄華を今に伝える至宝約170点が、イスタンブルのトプカプ宮殿博物館から来日している。トルコの歴史と文化には興味があるのだが、不勉強で何も知らないまま、ただ金と宝石をふんだんに使った、きらびやかな宝飾品のイメージに惹かれて、見に行った。

 冒頭にはトプカプ宮殿を紹介するビデオギャラリー。15世紀中頃に建設され、19世紀半ばまで行政機関とスルタンの住居として使われた。1924年、トルコ共和国建国時に博物館となり、オスマン帝国約の栄華を伝える9万点近い美術品を所蔵しているという。これは行ってみたい。最近、「死ぬまでに見ておきたい場所」は特にないと思っていたが、イスタンブールへは行ってみたくなった。

 最初の展示室はスルタンの愛用品の数々を展示。といっても、19世紀初頭のひじ掛け椅子、17世紀のターバン飾り、16世紀後半の宝飾兜など、時代がさまざまなので、これは明治維新の頃とか、これは関ヶ原の頃というように、日本史の年代を思い浮かべながら見る。オスマン帝国が13世紀末から20世紀初頭まで続いたことを再認識して驚く。

 面白かった展示品は、まず刀剣。名君の誉れ高いスレイマン1世の剣は片刃で、かすかに湾曲し、刀身に繊細な装飾(象嵌?)が施されていた。一方、両刃直刀タイプの剣もあった。中東といえば湾刀のイメージだったが、湾刀は小さな宝飾刀しかなかった。黄金の地金に宝石をごつごつ嵌め込んだ「射手用指輪」を見たときは、清朝の板指だ!と思った。もとは遊牧民が馬上から矢を射るときの実用的な指保護具(親指に嵌める)だが、次第に権力や権威の象徴として、贅沢を競うようになったもの。それから衣服のかたち(身頃と袖をひとつにして前後で縫い合わせる、袖は細い筒袖)も満洲族とよく似ていた。やっぱり遊牧民族のバリエーションなのだろうか。宮殿には後宮(ハレム)もあったし。展示には明示されていなかったけれど、調べたら宦官もいたようだ。

 チューリップモチーフの異常な愛され方には驚いた。カーテンや絨毯、装飾品や日用品はもちろんのこと、盾や武具にも使われている。スリムで細長い花の品種が特に好まれたという。チューリップ専用の花瓶(ラーレ・ダーン)があるのも面白かった。中国の牡丹好みに近いかな。あるいは宝相華かもしれない。

 なお、最後にトプカプ宮殿あるいはトルコ国立宮殿局が所蔵する日本の美術工芸品が里帰り展示されている。やや蛇足のような気もするが、日本とトルコの友好に尽くした山田寅次郎(宗有1866-1957)という人物が紹介されていて興味深く思った。

 展示会場を出て、グッズ売り場をうろうろ。実はお目当てにしてきたものがあるのだが見つからない…。すると、大きな籠に、色とりどりのリボンを結んだ小箱をたくさん入れたお姉さんが現われて、テーブルの一角に、それらの小箱を並べ始めた。これ、これ! トルコの宮廷菓子「ロクム」英語名を「ターキッシュ・ディライト」という。このお菓子は、イギリスの児童文学『ナルニア国物語』に登場することで有名。ただし、瀬田貞二さんは、日本になじみがないことから「プリン」と訳しているので、原文を読んでいないと知らないかもしれない。

 私は高校生のとき、夏休みの宿題で『ナルニア国物語』の原作を読まされ、「ターキッシュ・ディライト」を知った次第。その後、イギリスに行ったとき、ロンドンのハロッズでこのお菓子を見つけて、大喜びで買って帰った。しかし、正直なところ、期待したほど美味しくなかった。そこで今回は、正統派のビスタチオは避けて、珍しいザクロの「ターキッシュ・ディライト」にしてみた。控えめな甘みが和菓子みたいでたいへん美味しい。「ロクム」というお店、日本語ウェブサイトもあり、東京メトロの駅構内ブースなどを中心に、日本で商売をしていくみたい。うれしい。

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