見もの・読みもの日記

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書画工芸、妖怪ばなしで涼む/清涼消暑の美(五島美術館)

2021-06-28 20:55:18 | 行ったもの(美術館・見仏)

五島美術館 館蔵・夏の優品展『清涼消暑の美』(2021年6月26日~8月1日)

 「涼」をテーマに絵画、書跡、陶芸など、さまざまなジャンルの優品約50点を展観。こういうテーマ設定は、同館ではちょっと珍しいのではないかと思う。

 冒頭は書跡。書跡で「涼」と言っても難しいだろうと思ったが、一山一寧『園林消暑』など、それらしいものを選んである。これは晩年の書で、薄墨の草書、1行4~5文字の大きな文字が、のびのびと躍っている。後半は「言う莫れ人世炎蒸甚しと/馳求(ちぐ)を歇得(けっとく)すれば心自ら凉し」とあり、「心頭滅却すれば火もまた涼し」みたいな意味か。

 絵画は、過去現在絵因果経断簡(松永家本)『尼蓮禅河水浴図』が出ているのが珍しかった。お釈迦様が苦行を止めて沐浴し、スジャータから乳粥の供養を受ける場面。暑くて水浴びをしているわけではないが、涼しそうではある。お釈迦様、下着は赤ふんで、髪は丫頭(おだんご二つ)なのだな。室町時代の『山水図屏風』六曲一隻は、中国を舞台とし、山水を背景に高士や貴人の姿を描く。最近の中華ファンタジーの世界とあまり変わらない。

 本展には近代絵画も多数出ていて、小川芋銭が目立った。河童と狐(?)を描いた墨画『慈悲薬王』が好き。寺崎広業『夏のひととき』は、夏草の庭の竹のベンチに、白っぽい着物姿の女性が腰かけている。大正時代の女性像らしいさわやかな気品。橋本関雪『高士看瀑図』は色彩がきれいだった。斉白石の『群蝦図』『蝦図』もあり。陶芸は、青花、白磁、青磁など。

 面白かったのは「十返舎一九の妖怪ばなし」の特集で『信有奇怪会』『化物見越松』『河童尻子玉』などシリーズになっている。十返舎一九自身が描いた挿絵も楽しいが、添えられた粗筋を読んで、あんまりバカバカしいので、マスクの下で笑いを嚙み殺していた。

 なお、上述の作品は、このサイトでも閲覧できる。→※十返舎一九(天竺老人のホームページ)。翻刻はないが、画像が鮮明で、眺めるだけでも楽しい。こんな労作を作成・管理していらっしゃる方がいることに驚いた。画像の多くは帝国図書館の蔵書印があるので、原本は国会図書館の蔵書だろうか。

 第2展示室は漆芸。照明を落とした暗い展示室なので、螺鈿や蒔絵の輝きが目立って美しかった。『青貝布袋香合』の女の子みたいに可憐な布袋さんが好き。

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