見もの・読みもの日記

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優美と豪快/桃山の華(五島美術館)

2021-09-14 21:16:49 | 行ったもの(美術館・見仏)

〇五島美術館 館蔵・秋の優品展『桃山の華』(2021年8月28日~10月17日)

 絵画、書、工芸、古典籍など、時代の美意識を映した華やかな名品の数々を紹介。展示室に入ってすぐ目に入るのが、『秋草蒔絵文箱』と『古伊賀水指(銘:破袋)』。前者は、箸箱(筆箱)みたいな細身の箱で、薄、菊、桔梗、撫子などの華奢で可憐な秋草で包まれている。桃山の「優美」を昇華させたような工芸品。後者は焼成の際にできた大きな窯割れと歪みが魅力で、桃山の「豪快さ」「力強さ」の代表と言えるだろう。『破袋』は、緑色の強く出た側が「正面」として扱われているが、実は、向かって右の側面から見た様子がとてもいい。全体が少し前に傾いていること、割れ目を境として前後の色が全く違うことなど、「豪快さ」に拍車がかかる感じだ。

 冒頭の「人と筆跡」には、光秀、信長、秀吉の書状が出ており、史料好きにも興味深い展示だった。続く書画では、『加藤清正母像』と『加藤清正像』が珍しかった。どちらも京都・本圀寺の勧持院に伝承したものという解説があった。調べたら、現在、本圀寺は山科にあるが、旧塔頭の勧持院は下京区にあるそうだ。

お寺の風景と陶芸:勧持院 (京都市下京区)加藤清正ゆかりの寺

戦国を歩こう:勧持院と清正公碑

 清正の母・伊都は娘時代から日蓮宗の信者で、清正もその感化を受けたという。『加藤清正母像』は、艶やかな総柄の着物を着た垂髪の婦人が上畳(畳縁が極彩色で華やか)に座る図で、頭上には天蓋が浮かび、天蓋と肖像の間に、ひげ文字の「南無妙法蓮華経」が記されている。『加藤清正像』は、江戸の錦絵に描かれるようなドングリ眼の髭面ではなく、面長で髭は少なめ。バランスのとれたガタイのよさが感じられ、バスケの選手みたいだと思った。

 この展覧会、タイトルは「桃山の華」だが、実は琳派など江戸初期の作品も多数出ている。後半は、光悦+伝・宗達の『鹿下絵和歌巻断簡』や光琳の『紅葉流水図』を楽しませてもらった。伝・宗達筆『業平東下り図(伊勢物語富士山図)』はかわいいなあ。小さな画面に閉じ込められた素朴な構図だが、白い富士山は雄大だし、人物にも馬にも躍動感があって好き。乾山の『四季花鳥図屏風』は、さまざまな表情を見せるサギ(たぶん)が可愛い。乾山、こんな可愛い絵を81歳で描いてるんだなあ。

 茶入や陶芸も多様な作品を見ることができた。もっと広い家に住んでいたら、古備前や古伊賀の堂々とした花生を飾ってみたいが、今の生活で使えるのは、絵唐津四方筒向付かな(日替わりで楽しめるし)と思った。

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