見もの・読みもの日記

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北から来た人々/オホーツク文化(横浜ユーラシア文化館)

2021-10-25 20:40:03 | 行ったもの(美術館・見仏)

横浜ユーラシア文化館 特別展『オホーツク文化-あなたの知らない古代-』(2021年10月16日~12月26日)

 とても嬉しい展覧会が始まったので、さっそく見てきた。オホーツク文化とは、サハリン南部から北海道の東北部、千島列島にかけて、5世紀から9世紀頃に広がった古代文化で、アザラシなどの海獣狩猟と漁撈を生活の基盤とし、竪穴住居の奥にクマの頭を積み上げた祭壇を築くなど、独特の儀礼を行っていたことが分かっている。

 はじめに「本州の時代区分」と「北海道の時代区分」の比較年表が掲げてある。私は本州で育ったから、日本の古代といえば、縄文→弥生→古墳→飛鳥→奈良の順だと思ってきた。ところが、北海道では、縄文時代の後に弥生時代がなく、続縄文(紀元前3~紀元後7世紀)→擦文(7~13世紀)と続く。オホーツク文化は、続縄文時代後期から擦文時代にかけて「北海道の文化の本流とは別の、いわば『異民族』の文化が北方から南下し、北海道内で両者が併存していた時期」に、この「北から来た異系統の人々が営んでいた文化」である(引用は図録から)。そしてオホーツク文化は、道内のみで局所的に展開した地域文化ではなく、その背後にサハリン(樺太)や千島列島との広いつながりを持っている。

 私は、2013~2014年度の2年間、たまたま札幌に住む機会があって、こうした北海道独特の歴史を初めて知った。2014年の夏は、網走、湧別、紋別、枝幸、そして稚内までオホーツク海沿岸ルートを旅行し、今回の展覧会に多数の貴重な資料を提供している、東京大学大学院人文社会系研究科附属の北海文化研究常呂実習施設(現・北見市)にも立ち寄った。懐かしい。2015年にはサハリン旅行もしているので、「あなたの知らない古代」ではあるけれど、オホーツク文化には興味津々なのである。

 骨製の大きな釣針。九博の『海幸山幸』展の冒頭で見た、弥生時代(2~3世紀)の鉄製の釣針(実用でなく祭祀用)を思い出していた。北の海にも海幸山幸みたいな物語はあったのだろうか。でも海中他界は考えづらいだろうな。

 本展で一番面白かったのは、動物意匠遺物の数々。オホーツク人と動物との深い関わりを示すと考えられている。圧倒的に数が多いのはクマ。どれも小さいが表情豊かで、コロコロしてかわいいが、どこか人智のコントロールを超えた、不気味な野生も感じられる。

 竪穴式住居には、奥壁側に動物骨を集積した骨塚を設ける事例があり、動物儀礼の場だったと考えられている。展示には、ヒグマの頭骨を積み上げたものが来ていて、圧巻だった。

 特別展は2階の常設展示室にも続いている。ここで初めて見たのが、複数の牙製婦人像。大型海獣の歯牙で作られた女性像で、これまでに見つかったのは、わずか10点余りだそうだ。頭部には尖った頭巾か仮面のようなものを被っている。特定の遺跡に集中する傾向があるといい、ヒトのかたちが明らかで細工の精巧なものは、利尻・礼文島表記が多いように思った。

 蛇足だが、展示のキャプションの文字が大きくて、老眼にも読みやすいのがありがたかったので、記しておく。また北海道に行きたいなあ、夏でも冬でも。

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