見もの・読みもの日記

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秋の動物絵画まつり/動物の絵(府中市美術館)

2021-10-11 20:02:40 | 行ったもの(美術館・見仏)

府中市美術館 開館20周年記念『動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり』(2021年9月18日~11月28日)

 2000年10月に開館した府中市美術館の開館20周年を記念する特別展。本来、2020年秋に予定されていたが、コロナ禍で1年遅れの開催となった。私が初めて同館を訪ねたのは、2006年3月の企画展『亜欧堂田善の時代』である。同館のホームページ「これまでの企画展」でも、これが最初に挙がっている。その後、同館は、毎年春に江戸絵画の企画展を行うことが恒例化し、私はほぼ皆勤で通っているが、実は「江戸絵画まつり」しか行ったことがないので、今回、秋の気配の感じられる府中の森公園の風景を見て、ちょっと不思議な感じがした。

 本展は、東西の多彩な動物絵画の世界を紹介する。展示作品は183点(展示替え有)。日本絵画が圧倒的に多いかと思っていたが、けっこう頑張って動物の描かれたヨーロッパ絵画を集めてきており、数では日本絵画がやや多いくらいの比率である。日本絵画は鎌倉時代(13世紀)の涅槃図、ヨーロッパ絵画は14世紀の彩色写本から、近現代作家の作品まで、時代的にも幅が広い。

 曲がりくねった迷路のような会場に入ると、最初に待っていたのは伊藤若冲の『象と鯨図屏風』。天井の高い、比較的明るい展示室で、品のいい薄紫色の壁が、屏風の濃い青色の枠(縁)とも合っていて、とてもよかった。と書いて気づいたのだが、屏風の縁、以前(黄茶色)と変わったのではないかと思う。画像検索すると分かる。

 解説によれば、鼻を上げるポーズは涅槃図に描かれてきた象のパターン。涅槃図には鯨を描いたものもある。実例として、名古屋市・西来寺の『八相涅槃図』(江戸時代)が次に展示されていた(サンゴを加えたヘンな鯨)。最近、若冲の『象と鯨図屏風』は、母の十七回忌のために作られたのではないかという説が出されたそうだ。象と鯨の間に仏壇が設けられたのかな、などと想像してみる。

 好きな作品を挙げておくと、上田公長『雪中熊図』、文句なくかわいい。上田耕冲『鳥獣戯画』は、原本の丙巻の後半を模写して色をつけたもの。動物たちが烏帽子代わりにかぶっている木の葉の緑が鮮やかでクール。曾我蕭白『遊鯉図』は、縁起物なのかな。黒・白・金など、最小限の色彩で迫力ある画面を構成している。

 おなじみ若冲は、オンドリの後ろ姿と天を仰ぐメンドリの何気ない姿を描いた『鶏図』が出ていた。写実とデザインのバランスがとれた佳品で、企画者の選択眼に感じ入る。ポール・ジューヴの『木の上で横たわる黒豹』『座る白熊』もそうだが、動物の「かたち」って、つくづく面白いなあ。これを突きつめると、鍬形蕙斎『鳥獣戯画略画式』になるのだろう。そのままお菓子のデザインになりそう。こういうの、中国にも西洋にもない気がするが、どうだろうか。

 長谷川潾二郎の『猫と毛糸』や『猫』は、かたちの面白さもあるけど、身近な猫を愛おしむ気持ちがまさっているように感ずる。ヨーロッパにも家族の一員としての犬猫を描いた絵画はあるけれど、動物の「かわいい描き方」を身につけた画家は少ないという(図録の解説より)。その稀少な例外がピカソの『子羊を連れたポール、画家の息子、二歳』(ひろしま美術館所蔵)とのこと。日本人が、この絵を欲しくなる気持ちは納得である。近現代の日本画では、小倉遊亀『径(こみち)』や橋本関雪『唐犬』、西郷孤月『春暖』が出ていたのも嬉しかった。

 本展には、なんと徳川家光の絵画が10件も登場! 展示替えがあるので、前期に見ることができたのは6件だが、ミミズクが4件もあって、少しずつ顔つきが違っていた。最後は子犬の絵画を特集。応挙と芦雪だけでなく、宗達(たらしこみの黒犬)や仙厓(きゃふんきゃふん)も。小林一茶の『子犬図』は初めて見たが、かわいすぎて参った。しかし後期に出る若冲の『子犬図』(箕の中!)と上田公長『犬の子図』もよいなあ。もう一回、行かねば…。

 そしてお買いもの。これも後期展示予定、ピヨピヨ鳳凰こと、家光の『鳳凰図』のトートバッグ。B5サイズのノートPCを入れるのにちょうどよい。

 売店のレジのお姉さんが、帳簿を付けている同僚に「図録と鳳凰…ピヨピヨ1点」と報告していたのにちょっと笑った。

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