〇上野の森美術館 日中国交正常化50周年記念『兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』(2022年11月22日〜2月5日)
秦・漢王朝の中心地域である関中の出土品を主として、日本初公開となる一級文物など約200点を展示する。概要の「1974年に秦の始皇帝陵の兵馬俑坑が発見されてから、間もなく半世紀」を読んで気づいたのだが、兵馬俑坑の発見は、日中国交正常化の1972年9月のあとだったんだなあ。その後、私は学生時代の中国旅行で実際に始皇帝陵も見に行ったし、兵馬俑関連の展示が日本であると、ほぼ欠かさず見に行っている。今回は、2015年の東博『始皇帝と大兵馬俑』以来の本格的な展示と言えるだろう。
展示会場は2階から始まり、1階に続く。あとで出品リストを見て理解したのだが、2階が「第1章(春秋戦国)」と「第3章(漢)」で、1階が「第2章(秦)」に当てられているのだ。ちょっとまごつく構成である。1階は全て写真撮影可で、青銅製の車馬の複製、青銅製の長剣、矛、戟、銭(秦半両銭)、木簡(里耶秦簡)などが1室、最後の1室がお待ちかね兵馬俑で、武士俑など8体と大きな戦車馬1体、それに馬の飼育係の役人だという鎧を付けない青年の跪坐俑が1体来ていた。
たぶん一番人気の『跪射武士俑』。展示キャプションには、全て出土年が記載されており、けっこう早かった。私は、2012年と2015年の東博の展示で『跪射俑』を見たことを記録しているが、同じものだろうか。
後ろ姿。腰の落とし方、身体の重心がとてもリアル。複雑なヘアスタイルを丁寧に再現しているのも魅力的。
『立射武士俑』は、甲冑をつけていないし、弓(弩)を持っていないので、なんだか人を小馬鹿にしているポーズのようにも見える。
このほか『戦服将軍俑』や『鎧甲軍吏俑』など、着るものや冠に特徴のある俑が来ていた。近年、中国製の古装ドラマをよく見ているおかげで、古代の甲冑や兵装を以前よりリアルに想像できるようになった気がする。
漢代は小型の陶俑が主流で、歩兵俑、騎馬俑などがある。騎馬俑の場合、まだ鐙(あぶみ)が一般化していないため、騎乗者は両足の大腿部で馬の胴を締め付けて乗馬していたという解説に唸った。なるほど、騎馬は相当な特殊技術だったのだな。女性の騎馬俑(上から衣装を着せる形式のため、裸体)もあったのは、騎馬民族系なら男女問わず、鐙なしに馬に乗れたということかな。牛、馬、豚、山羊、羊などの動物俑もあり。家畜犬と野生犬の特徴(顔立ち、尻尾)をよく捉えていると思った。
なるべく出土年と所蔵館を気にしながら見ていたのだが、1970~80年代の出土品もあれば、2000年以降、2010年以降の出土品もけっこうあった。そして、有名どころの秦始皇帝陵博物院、陝西歴史博物館、漢景帝陽陵博物院(2011年に行った!)などのほか、市・県クラスの初めて聞く博物館も多かった。中国、また行きたいなあ…。