見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

仏像と歴史資料ほか/令和5年新指定国宝・重要文化財(東京国立博物館)

2023-02-15 22:28:24 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館・平成館・企画展示室  特別企画『令和5年新指定国宝・重要文化財』(2023年1月31日~2月19日)

 新指定の展示は、なるべく見に行くようにしている。文化庁『新指定国宝・重要文化財展』のページに過去の記録がまとまっているが、コロナ前の平成31年度(2019)までは、ゴールデンウィーク前後の開催が定例だった。今回は久しぶりの再開である。展覧会のタイトルは「令和5年」だが、文化庁のサイトでは、展覧会年度が「令和4年度」になっている。令和4年度(2022)指定分なのかと思ったら、目録には「令和5年の指定予定品一覧です」と小さく注記されていた(ややこしい)。しかも、これまでの習慣で本館に行ったら何も案内がないので、慌ててスマホでチェックして、平成館1階で開催されていることを知った。

 展示室の入口に立つと、数体の仏像が目に入る。手前のケースに収まっていたのは、50cmほどの木造不動明王立像(京都・観音寺、平安時代)。短い弁髪を垂らしているので不動明王だと分かるけれど、大きく盛り上がった髪、眉根を寄せた太い眉など、かなり異相である。子どものように頭でっかちだが、肩や上腕部はたくましい。不動明王としては極めて古い作例だという。

 その奥には、大きな木造十一面観音立像(京都・乙訓寺)。右手に錫杖を持つ長谷寺式の十一面。鎌倉時代らしい、厳しめで整った顔立ちで、身体に添って流れる天衣が美しい。像内から大量の紙片が発見されており、文永5年(1268)に造られた「一日造立仏」であることが判明している。ただし納入品は後期展示(2/14-)で見られなかった。

 その隣り、なんだか癖の強いのがいるなあと思ったら、愛知・瀧山寺の木造十二神将立像(鎌倉時代)の1躯だった。瀧山寺のホームページの写真を見ると、午神らしい(草履を履いていた)。髪型も面貌表現も独特すぎる。布地の少ない装束が、妙に細部まで丁寧なつくりなのも面白い。次は京都・上徳寺の木造阿弥陀如来立像(鎌倉時代)。手の上げ下げが通例と逆なのは、宋代絵画の影響と見られている。唇を玉でつくる玉唇という技法を用いており、確かに糸のように細めた目よりも、肉感的な唇が印象に残る。

 奈良・丹生川上神社からは女性の木造神像2躯(平安~鎌倉時代)が来ていた。古い方は、頭が大きく素朴なプロポーションだが、もう一方の罔象女神(みづはのめ、みつはのめのかみ)は、かなり写実的で洗練された人体表現だった。

 このほか、絵画はMIHOミュージアムの3件『鳥獣人物戯画甲巻断簡』(衣を着て扇で人を招くサル、おんぶした親子カエル)『鳥獣人物戯画丁巻断簡』(相撲と競馬)『地獄草紙断簡・解身地獄』が眼福。

 歴史資料では、横山松三郎関係資料(個人蔵)の一括指定がうれしかった。展示には松三郎の自画像が来ていた。国友一貫斎関係資料(個人蔵)や大槻家関係資料(一関市博物館保管)もうれしい。高橋至時、間重富らの書簡を修正した『星学手簡』は「東京天文台図書之印」の押されたページを見ることができた。琉球関係の資料は、近年、指定が続いているように思う。『銘苅家文書』や『琉球国王朱印状』は、ちゃんと日付の上に朱角印が押してあって東アジアの正統派だと思った。

 考古資料はバラエティに富んでいたが、やっぱり一番印象的だったのは「国宝」指定の「北海道白滝遺跡群出土品」(遠軽町、後期旧石器時代)である。展示品は全て黒曜石の石器だった。北海道の遺跡、もっと行ってみたいなあ。

※参考:北海道遺産

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする