〇Fantasy on Ice 2023ライブビューイング(神戸:2023年6月25日、13:00~)
私の一番好きなアイスショーFaOI(ファンタジー・オン・アイス)。今年は宮城公演1回と新潟公演2回を現地で見ることができた。最後の神戸公演は、金曜だけチケットが取れたのだが、仕事を休むことができず、泣く泣くリセールに出した(瞬殺で買い手が付いた)。日曜はライブビューイングがあることが分かっていたので、我が家から近い下町の映画館のチケットを確保した。前日にコンビニで発券したら、最前列の席で笑ってしまったが、このアイスショーに関しては贅沢は言わないことにしている。
この日はFaOI2023の大楽で、プロスケーターのジョニー・ウィアがこのツアーを最後に引退することを表明していたので、何かとんでもなく「特別」なことが起こるのではないかという予感はあった。まず冒頭の群舞「History Maker」から、出演者がみんな特別な気持ちで滑っている感じがした。ディーン・フジオカさんが、歌の間に何かシャウトしたのを私は聞き取れなかったが、「We love you, Johnny, You're the history maker!」と叫んでくれていたらしい。ディーンさん、フィギュアスケートと接点を持ったのはこのツアーが初めてだと思うのに、何の衒いもなく、観客と出演者の思いを表現できてしまう素直な人柄と才能に惚れた。後半のMCでは「終わってほしくないですねえ、終わりたくない」を繰り返していた。
ジョニーの「Creep」は、ここまで孔雀のような華麗な衣裳が見どころだったが、最終日、照明が明るくなると、リンク上にいたのは、ノーメイクに練習着(くたびれたタンクトップとスパッツ)のジョニーだった。これは泣いた。後半の「clair de lune(月の光)」は最後を飾る純白の衣裳。万雷の拍手を浴び、何度も何度も客席に手を振って退場した。退場口で他のスケーターたちが「Thank you Johnny」の看板?垂れ幕?を持って待っていたのは、このときだったかしら。
そのほかの見どころを書いておくと、ステファンは「Simple Song」。最後に手首から先にだけ照明が当たる演出が好き。宮原知子ちゃんの「Slave to the music」を見ることができたのは嬉しかった。ディーンさんと田中刑事くんの「Apple」も大画面のおかげで魅力マシマシ。
大トリは、中島美嘉さんと羽生結弦くんの「GLAMOROUS SKY」。大ヒットした映画『NANA』(2005年)の主題曲であるが、私はマンガも映画も、この頃、あまり興味がなくて、記憶に残っていない。なので、新潟公演で初見のときは置いていかれた気持ちでいたが、だんだん好きになってきた。中島美嘉さんも羽生くんも、軽々とジェンダーを越境していく感じが気持ちいい。ショープログラムとしてはハードな構成で7回ジャンプを跳んで全て成功させた。最後に大きなハイドロを描いて、原点に戻っていくのも美しかった。
そして演技が終わったとき、羽生くんはすでに泣いていたように思う。フィナーレの群舞「STARS」はなんとか笑顔で乗り切ったんだけど、羽生くん、大丈夫か?と心配しながら画面を見ていた。以下は私の記憶の誤りもあるかもしれないがご容赦を。いつもの周回から一芸大会になり、ジョニーとステファンが向かい合わせのクリムキンみたいなスタイルで一緒に滑る技を披露。そのあと、Tシャツ姿でリンクに戻ってきた羽生くんとジョニーが並んでズサー(仰向けに氷上に滑り込む)を披露。
それから会場アナウンス(女性)に応えて、ジョニーがマイクを取って会場に挨拶。会場アナウンスが「ジョニー、私たちからのプレゼントがあるのよ(英語)」と呼びかけると、会場が暗転し、観客の皆さんがスマホの明かりを点けて、ペンライトのように振ってくれた、感極まって涙するジョニーを多くのスケーターたちが取り巻き、抱き着き、ぎゅうぎゅうの団子状態になってしまったところに、もう一度、王子様衣装に着替えて、大きな花束を抱えた羽生くんが登場。しばらく気づいてもらえなくて、呆然としていた(笑)。ようやく花束を渡すと、ひとり緊張した面持ちでリンクの中央へ去っていく羽生くん。音楽がかかり、ジョニーのレガシー・プログラム「Otonal」のクライマックスを滑る。ジョニーと他のスケーターたちは、ステージの端に腰を下ろして、それを見ていた。ライビュのカメラは、羽生くんのパフォーマンス越しにスケーターたちを捉えていて、とてもよかった。「Otonal(秋に寄せて)」は競技プロとして羽生くん自身も滑ったことがあるが、分かる人によれば、ジョニー版の完コピ演技だったという。
再び周回。坂本花織ちゃんがスマホを持ってきて、自撮りスタイルでみんなと記念撮影してたのはこのときかな(ジョニーのインスタにそれらしい写真あり)。最後に羽生くんとジョニーは、声を揃えて「ありがとうございました」を言って退場口に消えて行った。
FaOIは、毎年、忘れられない思い出を残してくれるのだが、とりわけ今年は歴史の目撃者になった気がした。人は出会い、別れても、歴史は続いていく。来年はどんなショーになるだろう。