見もの・読みもの日記

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描かれ、演じられた行列/行列にみる近世(国立歴史民俗博物館)

2012-12-11 22:59:26 | 行ったもの(美術館・見仏)
国立歴史民俗博物館 企画展示『行列にみる近世-武士と異国と祭礼と-』(2012年10月16日~12月9日)

 「全国的な広がりをもって行列が往来した」という日本近世の特色に着目し、参勤交代の武士の行列、朝鮮通信使や琉球王国の使節、オランダ商館長など外国使節の行列、祭礼の行列など、さまざまな行列を紹介する。

 冒頭、私たちが行列といえば最初に思い浮かべるのは「大名行列」だが、屏風や絵巻物に書かれた画像の多くは、近代以降の制作です、という指摘に驚く。そうなのか? 冷静に考えてみれば、上杉本『洛中洛外図』も、『東福門院入内図屏風』も、行列は描かれているけど、参勤交代の図ではない。近代的な諸制度が整った後、平和で繁栄した徳川の世の象徴として、武士たちの行列が懐かしまれるようになったという。関連して、西条八十作詞の「鞠と殿様」、作者不詳の童謡「ずいずいずっころばし」(御茶壺道中)が取り上げられていたのは、私の世代にはなつかしかった。

 続く「異国の使節の行列」では、かなりスペースを割いて、めずらしい資料を公開。朝鮮通信使の歓迎は、とにかく盛大なプロジェクトだったんだな。琉球使節を描いた瓦版が、ハワイ大学図書館にあるのか~など、興味深く眺めた。

 企画展示・第2室に移ると、「祭礼の行列」。江戸の天下祭り(神田祭と山王祭)、京都の祇園祭など、神輿を供奉する神主と武士+町人たちが町単位で出す出し物を組み込んだ行列が、各地の城下町でおこなわれた。大阪府立中之島図書館蔵『崎陽諏訪明神祭祀図』だったかな、神輿渡御の間は、路傍の家の中にいる人たちは、礼儀正しく眺めて(時には拝んだりして)いるが、出し物行列になると、どんちゃん騒ぎの酒宴となり、最後に長崎奉行がやってくると、簾を下して、簾の中で酒宴を続けている。

 さらに面白いのは、町人たちの祭礼行列の中に、領主の行列(大名行列)や外国使節の行列が「仮装」として組み込まれるようになったこと。しかし、外国人に関する情報が不十分だと、あり得ない空想が演じられるようになる。朝鮮通信使の一行に、馬上で鶏をむしって食べている人物が描かれているなどが、その一例。あと、実際の大名行列では、酒に酔って赤い顔をした武士も描かれているのに、「仮装」では実際以上に毅然とふるまっている、というのも面白かった。この「現実」と「仮装」の判別は、同時代の人たちにはできたのかもしれないが、今日、絵画資料を使う場合は、要注意だと思う。

 「エピローグ」では、近世から近代に移り変わる時期の行列に注目。天保10年(1839)3月中旬から4月にかけて、京都市中で爆発的に流行した「京都豊年踊り」またの名を「蝶々踊り」と言って、赤いものを身につけたり、野菜や動物に仮装して、踊り狂う人々の絵画資料に目を見張ったが、これはもう「行列」の範疇じゃないような気がする…。

 後半は、ギャラリートークのおかげで、見どころがよく分かって、非常に楽しめた。12/8(土)にギャラリートークは予定されていなかったはずだが、行ってみたら、声が聞こえてきたので、途中から参加してしまった。終わってから講師が時計を見て「やっぱり二時間かかっちゃったか~」と苦笑まじりにつぶやいていらした。熱いなあ。たぶん久留島浩先生だと思う。

 れきはくの展示は、資料を読む楽しみがビジュアル化したような趣きがあって、ほかの博物館や美術館では味わえない、独特の興奮がある。久留島先生は、電子化した絵画資料を、大型のタッチスクリーン上で、自在に拡大したりスクロールしたりしながら「ほら、ここ、この人物!」とテキパキ解説していらした。こういう取組みも、もっと広まればいいと思う。

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