見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2024年11-12月展覧会拾遺

2024-12-25 22:52:02 | 行ったもの(美術館・見仏)

そろそろ年末の棚卸し。

半蔵門ミュージアム 特別展『小川晴暘と飛鳥園 100年の旅』(2024年9月11日〜11月24日)

 今年の春、奈良県立美術館で開催されているのを見逃してしまったなあと思っていたら、東京に巡回してきてくれたので見に行った。飛鳥園の創業者で仏像写真の第一人者・小川晴暘(1894-1960)とその息子光三(1923-2016)の作品、さらに光三に師事し、現在飛鳥園に所属して撮影を続ける若松保広(1956-)の作品を紹介する。彼らの仏像写真が素晴らしいのはもちろんだが、創業当時の飛鳥園の店先など、歴史を伝える記録写真も面白かった。

神奈川県立歴史博物館 特別展『仮面絢爛-中世音楽と芸能があらわす世界-』(2024年10月26日~12月8日)

 神奈川と深く関わる仮面や、中世の武士たちが親しんだ仮面の数々を集めることで、仮面の背後にある地域に息づく豊饒な音や音楽の存在を発見し、またこうした文化を利用しながら、地域を支配しようと試みた領主たる武士たちの姿をも捉えていく。神奈川以外の地方に伝わる仮面も多く、私は千葉県山武郡の広済寺に伝わる「鬼来迎(きらいごう」(ビデオ紹介あり)に惹かれた。千葉県香取市の浄福寺所蔵で「かぶると3年以内に死ぬ」と言い伝えられている幽霊面も展示されていており、まあ確かに恐ろし気だった。

横浜開港資料館 日米和親条約170周年記念特別展『外国奉行と神奈川奉行-幕末の外務省と開港都市-』(2024年9月21日~11月24日)

 幕末の外国奉行と神奈川奉行にスポットをあて、組織の実態や外交官たちの姿、開港都市横浜の様相を紹介する。Part1「外国奉行-幕末の外務省」(10月20日まで)とPart2「神奈川奉行-開港都市を治める」(10月26日から)の二部構成になっており、私が参観できたのは「神奈川奉行」の展示だった。思ったより複製資料が多かったが、日常勤務を想像させる資料あり、事件記録あり(生麦事件など)で面白かった。

根津美術館 重要文化財指定記念特別展『百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉』(2024年11月2日~12月8日)

 『百草蒔絵薬箪笥』は、何度か同館で見たことがあったが、本展はこの薬箪笥を主役にした特別展。はじめに作者・飯塚桃葉(初代)の蒔絵作品を展示。 それから『百草蒔絵薬箪笥』の制作背景というべき植物図譜や博物図譜を紹介。肝心の『百草蒔絵薬箪笥』は?と思ったら、内容物を1つ1つバラされて(ガラス瓶、薬の紙包みなど)、広いスペースを取って展示されていた。服部宗賢所持の薬箪笥(杏雨書屋蔵)と緒方洪庵所持の薬箱(壮年期と晩年期の2件、大阪大学適塾記念センター)を見ることができたのは貴重な体験で、『木村蒹葭堂貝類標本』(大阪市立自然史博物館)は眼福だった。

國學院大學博物館 特別展『文永の役750年 Part1. 海底に眠るモンゴル襲来-水中考古学の世界-』(2024年9月21日~11月24日)

 長崎・佐賀県境に位置する伊万里湾の鷹島海底遺跡における水中考古学調査研究とその成果について紹介する。展示品の『てつはう(鉄砲)』や元軍の印、武具や陶磁器は、今年初めに鎌倉歴史文化交流館の企画展『異国襲来』でも見たものだった。水中調査のビデオ映像は初めて見た。もちろん探査装置も使うのだが、最後は潜った人間が、手探りで海底の泥を掻き分けて遺物を探していた。

東京国立近代美術館 企画展『ハニワと土偶の近代』(2024年10月1日~12月22日)

 本展は美術を中心に、文化史の舞台に躍り出た「出土モチーフ」の系譜を、明治時代から現代にかけて追いかけつつ、ハニワや土器、土偶に向けられた視線の変遷を探る。東博の『はにわ』展が、素直に見て楽しみ、驚く展示だとすれば、こちらは、さまざまな歴史的情報を考慮に入れて、読んで考える展示だった。埴輪(はにわ)と土偶では、ハニワブームのほうが早い。戦前のハニワは、万世一系の歴史と、皇室に従う純良な日本人を象徴していた。戦後、考古学が実証的な学問として脚光を浴びるとともに、「日本的なるもの」の探求が盛んに行われた。一方、1970-80年代にはSF・オカルトブームの影響を受け、先史時代の遺物に着想を得たキャラクターが量産された。とても面白いので、どなたか、このテーマで新書の1冊くらい書いてほしい。

大倉集古館 特別展『志村ふくみ100歳記念 -《秋霞》から《野の果て》まで-』(2024年11月21日~2025年1月19日)

 染織家・志村ふくみ(1924-)の100歳記念回顧展。志村さんといえば、私は桜や花のイメージを持っていたのだが、1階展示室は青系統の作品が多くてちょっと意外だった。解説を読んでいったら、志村さんは近江八幡の生まれだそうで、ああ琵琶湖の青だ、と合点がいった。「夭折の画家である兄・小野元衞」という紹介もあって、名前に覚えがあったので自分のブログを検索したら、倉敷の大原美術館でこのひとの絵を見た記事が出てきた。志村さんは新作能「沖宮」の衣裳を制作したり、クラッシック音楽やリルケの詩に着想を得たり、多彩な人である。


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