○札幌芸術の森美術館 『篠山紀信展 写真力』(2014年4月26日~6月15日)
このところずっと週末を札幌で過ごしている。気候もいいし、家事と買いものだけで週末が終わるのもつまらないので、出かけてみた。地下鉄・南北線の終点からバスに乗っていく。緑あふれる広大な敷地の中にある美術館。あんなに盛大なカエルの声を聞いたのは、津和野に行ったとき以来だ。
多彩な活動を見せる写真家・篠山紀信の名前はもちろん知らないわけではないが、どんな展覧会なのかは、よく分からずに来てみた。はじめの展示室は、入口の暗幕をめくって中に入る。黒一色の闇の中に、神像のように巨大な人物写真が浮かび上がっている。「GOD」(鬼籍に入られた人々)の文字。正面には、筋骨隆々とした三島由紀夫の裸体写真(モノクロ)。1枚は例の「聖セバスチャンの殉教の」コスプレ(ほぼノーコスチュームだけど)。もう1枚も、自慢の肉体美をどうぞ見てくれというように挑みかける作家。いや見事だけど、私は三島がボディビルディングを始める前の写真を見たことがあって、その衝撃的にしょぼい肉体が目にちらついてしまう。いろいろと面白いなあ、三島って。彼が筋肉老人として生きていたら、いまの日本の右派勢力に何を言っただろうか。
「GOD」の部屋には、ほかに勝新太郎、渥美清、きんさんぎんさん、大原麗子など。死してなお、多くの日本人の記憶に生き続けている人々だ。
これ以降は、明るい白い壁の展示室で、第1室よりは幾分小さい、しかし、私が想像していたよりもかなり大きなサイズの写真が並ぶ。篠山紀信の写真というと、本や雑誌でしか見たことがなかったけど、原画はこんな拡大プリントにも耐える精度なんだな、ということに驚く。「STAR」は、1970年代に撮られた田村正和、舟木一夫、大竹しのぶ(の初々しい姿)からAKB48、壇蜜まで。私が芸能界に詳しくないせいか、誰だかすぐに分からない写真もあって、手元の資料で名前を確認し、あれ、知っている女優さんだ!と驚くものもあった。
「SPECTACLE」では、主に東京ディスニーランドの写真と、歌舞伎俳優の舞台上の写真が向き合う構成で面白かった。坂東玉三郎の美しさは別格だなあ。「BODY」は全裸で跳躍するヴラジーミル・マラーホフ(バレエダンサー)、大相撲の朝青龍、白鵬、さらに刺青の男女など。大相撲協会の集合写真は、貴乃花、曙が横綱だった時代のもの。力士にも親方にも、今はなつかしい顔がちたほら。集合写真というのは、個人写真以上に「ある時代」の断面という感じがする。もちろん女性のヌード、セミヌードも。
最後の「ACCIDENTS」は、2011年3月11日の東日本大震災で被災された人々を撮ったもの。幼な子の呆けたような沈鬱な表情は、見る者が「被災者の肖像」と思って眺めるからそう見えるのか。逆に、カメラを向けられたとたん、笑顔をつくろうとする人間の習性が見えたり(良し悪しではなく)、戦争や災害の「報道」写真の意味について、いろいろ考えさせられる。
このところずっと週末を札幌で過ごしている。気候もいいし、家事と買いものだけで週末が終わるのもつまらないので、出かけてみた。地下鉄・南北線の終点からバスに乗っていく。緑あふれる広大な敷地の中にある美術館。あんなに盛大なカエルの声を聞いたのは、津和野に行ったとき以来だ。
多彩な活動を見せる写真家・篠山紀信の名前はもちろん知らないわけではないが、どんな展覧会なのかは、よく分からずに来てみた。はじめの展示室は、入口の暗幕をめくって中に入る。黒一色の闇の中に、神像のように巨大な人物写真が浮かび上がっている。「GOD」(鬼籍に入られた人々)の文字。正面には、筋骨隆々とした三島由紀夫の裸体写真(モノクロ)。1枚は例の「聖セバスチャンの殉教の」コスプレ(ほぼノーコスチュームだけど)。もう1枚も、自慢の肉体美をどうぞ見てくれというように挑みかける作家。いや見事だけど、私は三島がボディビルディングを始める前の写真を見たことがあって、その衝撃的にしょぼい肉体が目にちらついてしまう。いろいろと面白いなあ、三島って。彼が筋肉老人として生きていたら、いまの日本の右派勢力に何を言っただろうか。
「GOD」の部屋には、ほかに勝新太郎、渥美清、きんさんぎんさん、大原麗子など。死してなお、多くの日本人の記憶に生き続けている人々だ。
これ以降は、明るい白い壁の展示室で、第1室よりは幾分小さい、しかし、私が想像していたよりもかなり大きなサイズの写真が並ぶ。篠山紀信の写真というと、本や雑誌でしか見たことがなかったけど、原画はこんな拡大プリントにも耐える精度なんだな、ということに驚く。「STAR」は、1970年代に撮られた田村正和、舟木一夫、大竹しのぶ(の初々しい姿)からAKB48、壇蜜まで。私が芸能界に詳しくないせいか、誰だかすぐに分からない写真もあって、手元の資料で名前を確認し、あれ、知っている女優さんだ!と驚くものもあった。
「SPECTACLE」では、主に東京ディスニーランドの写真と、歌舞伎俳優の舞台上の写真が向き合う構成で面白かった。坂東玉三郎の美しさは別格だなあ。「BODY」は全裸で跳躍するヴラジーミル・マラーホフ(バレエダンサー)、大相撲の朝青龍、白鵬、さらに刺青の男女など。大相撲協会の集合写真は、貴乃花、曙が横綱だった時代のもの。力士にも親方にも、今はなつかしい顔がちたほら。集合写真というのは、個人写真以上に「ある時代」の断面という感じがする。もちろん女性のヌード、セミヌードも。
最後の「ACCIDENTS」は、2011年3月11日の東日本大震災で被災された人々を撮ったもの。幼な子の呆けたような沈鬱な表情は、見る者が「被災者の肖像」と思って眺めるからそう見えるのか。逆に、カメラを向けられたとたん、笑顔をつくろうとする人間の習性が見えたり(良し悪しではなく)、戦争や災害の「報道」写真の意味について、いろいろ考えさせられる。