北向きに足柄平野に立つと西方向に明神が岳、金時山、富士山、その前にお結びのような矢倉岳、そして北西方向には大野山、北側に松田山、その奥には丹沢山塊が聳えています。
今回は、その中で地質学的にも貴重な矢倉岳(870m)に登ってきました。
神奈川県南足柄市矢倉沢の矢倉沢部落から矢倉岳へ、そして足柄峠に向けての登山ルートを歩きました。 登り始めは直登の急坂でイノシシ除けの柵を抜け、振り返ると茶畑越しに足柄平野と曽我丘陵が望めた。
植林の針葉樹林帯を抜けた標高600m付近から傾斜が緩くなり、その後 630m付近から再び傾斜がきつくなります。 その辺りから深成岩体が露出してくると言われ、足元に注意しながら登りました。 それはこの矢倉岳のみに沢山見られるという、ごま塩模様の『石英閃緑岩』観察登山なのです。
それでは、まず言葉の解説をさせて頂きます。 火山噴火……地下深くでできたマグマが地表に噴き出す現象。 溶岩…………噴出したマグマが地表で冷え固まってできたもの。 火成岩………マグマが冷えて固まった岩石。 火山岩………溶岩を含め、マグマが地上付近で急速に冷えて固まってできる火成岩。 深成岩………地下深くで、ゆっくりと冷え固まってできた岩石。
神奈川県には有名な深成岩体が2つあるそうです。 その1つは丹沢山地の中心部に分布する深成岩体で、もう1つが矢倉岳とのことです。
矢倉岳周辺の地質は足柄層群と呼ばれ、約200万~70万年前に伊豆と本州の間にあった海に、泥や砂、レキが堆積してできた地層で、この地層がおよそ170万~120万年前にできました。 その直後の115万年前にマグマが入り込んでゆっくりと冷え固まり、後に矢倉岳となる岩体ができました。 できた岩石の種類は「石英閃緑岩」と呼ばれる深成岩の一種です。
矢倉岳の山頂付近は深成岩体で、115万年前にできたことはそう珍しくはないようです。世界的に見ても珍しいのは、115万年前にできた岩体が、既に地表に露出している点だそうです。
このように矢倉岳を含む足柄山地は急速な隆起をし、上部にあった軟らかな足柄層群は浸食され、堅い深成岩体部分が取り残され、現在のような矢倉岳の姿になったとのことです。
本来であれば、まだ地中深くにあるべき岩体が、先輩の地層を追い抜いて最速で地表に現れていることが世界的に珍しいと言われています。
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