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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている

2014-12-04 22:09:06 | 読んだ本
佐々涼子 2014年6月 早川書房
ちょっと前に買って、つい最近読んだ本。早く読みゃあよかった。
持ってるのは、8月10日で早くも8版のもの。
サブタイトルは「再生・日本製紙石巻工場」、2011年3月11日の東北の地震で、津波によって壊滅的な被害にあった製紙工場が、そのほぼ1年後までに復興するさまのノンフィクション。
ダメだねえ、あの地震の後のこととか思い出すと、個人的に。読んでると、ところどころ目がウルッとしちゃうことがある、ふつうに朝夕の電車のなかで読もうとしたんだけど、それは途中でやめた。
地震当日のこと、そのあとのことも、リアルに書かれてる。
津波から逃げるとか、逃げられないで水に呑まれてくひとを助けられないとか、そういう状況、とても悲惨。
ちなみに工場は津波でグチャグチャになっちゃったけど、当日働いていた1306名全員が無事だったというのはすごい。
で、その後、工場を復活させるために、入り込んだ泥水や瓦礫を撤去していくんだけど、そこに、
>構内で発見された遺体は、全部で四一体となった。
なんてボソッと書いてある。いやだいやだ。
荒れ果てた街で、バットとか振り回して、自動販売機こわしたり、商店から略奪したりする連中の存在も書かれてる。いやだいやだ。
さて、本題の工場の再立ち上げに関しては、早い段階で工場長が、とにかく1台機械を動かす、期限は半年、と宣言する。
瓦礫でグチャグチャ、電気もない状態で、半年後に動かせるわけないと、全員が思うんだけど、リーダーが断固として目標を譲らないので、みんながんばる。いろいろがんばる。すごいがんばる。
できるかどうかは、まだ新しい本だから、こんなとこでばらさない、読んでのお楽しみというものでしょ。
それはそうと、本につかう紙については、たいへん勉強になった。
色とか、厚さとか、固さとか、手触り感とか、耐久性とか、いろいろあるらしい。
出版社の側も実はこだわりがあるそうで、
>文庫っていうのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。
ってこの石巻工場で紙をつくってるひとは言う。知らなかった。
そういうオーダーにこたえるべく、紙をつくってるんだそうな。
著者も、
>紙の本の読書体験は、本を開く前から始まっており、その触り心地やにおいの記憶自体が、作品世界に影響を与える。
>そして、我々は「めくる」ことによって、さらに読書を“体験”していき、本にはその痕跡が残るのである。
という具合に、本の手触りや個性の擁護者なので、読んでるとますます、そうだよなって気にさせられる。
ちなみに、本書の最後には、【使用紙】として、「本文:オペラクリームHO四六版Y目58.5kg」だなんて、(同様に、口絵、カバー、帯についても)わざわざ書いてある。記号の意味はわかんないけど、いい紙だ。
紙の本、好きです、私。


コメント
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