P・D・ジェイムス/小泉喜美子訳 1987年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
原題「AN UNSUITABLE JOB FOR A WOMAN」は1972年イギリスの探偵小説。
こないだ読んだ丸谷才一の『ウナギと山芋』のなかの書評「男には書けない本」に、
>早川ミステリひさびさの佳品である。翻訳探偵小説の愛読者は、この、いかにも本場ものらしい長篇小説によつて、長いあひだの渇きをいやされるのではなからうか。
>しかも嬉しいことに、翻訳がすこぶる優れてゐる。(略)
だなんて紹介されてるので、それほど探偵小説を愛読している者ではないが、読んでみる気になった。
その書評は週刊朝日1975年2月28日号のものなんでね、40年以上経過してからそこたどりついたわけで、なんだかなあという気もするが、そういうのもありか。
女性にはふさわしくない仕事である私立探偵になるのは、22歳のコーデリア、まったくのアマチュア。
刑事を退職したベテランのバーニイ・プライドに仕込まれて、共同経営をもちかけられて事務所を設立。
ところが物語の冒頭で、バーニイはガンを患ったことを悲観して手首切って自殺してしまう。
葬式を済ませて、行きつけのパブにいくと、周囲からは、
>「新しい仕事を探すんでしょう? どう考えたって、あんた一人ではあの事務所はやって行けないものね。女には向かない職業だよ」
だなんて言われてしまうが、コーデリアは探偵事務所を続けようと決心する。
孤独な船出となったところへ、微生物学者のロナルド・カレンダー卿から初仕事の依頼が舞い込む。
優秀な学生だった息子のマークが、なんの予告もなく学校をやめたうえに、突然自殺してしまったが、その理由を知りたいというもの。
大学町ケンブリッジへ出向いて、マークと生前親しかった男女に会って調査をするんだが、
>「とにかく、女には向かない職業だと思うわ」
だなんて陰で言われてるのを聞いてしまったりする。
そんなんだから、マークの専攻した歴史の先生に会ったときには、「ぼくは思いますねえ、その仕事は、つまり―」って相手が言い出したときに、コーデリアのほうから「女には向かない職業、というわけですね?」って先回りして言っちゃう。
そんなことしてるうちに、コーデリアは、マークの死は他殺ではないかと疑いをもつが、何者かに脅かされ、襲撃される。
けど、絶望的な苦境におかれても、持ち前の勇気と知恵と体力とで、彼女は這い上がってくる。
事件は意外な展開になるが、そこはまあ古い作品とはいえ、バラしてもしょうがない。
丸谷才一の書評によれば、
>謎の作り方は堅牢で、小説的な興趣は極めて豊かであり、登場人物のあつかひ方は情愛にみちてゐる。ことにすばらしいのは大団円がすんでからの嫋々たる余韻で、読者はおそらく、いかにも探偵小説らしい探偵小説を読んだといふ満足をたつぷりと味はふことにならう。
ということで、私はそこまで絶賛する自信はないが、まずまずおもしろく読み進めることはできた。
原題「AN UNSUITABLE JOB FOR A WOMAN」は1972年イギリスの探偵小説。
こないだ読んだ丸谷才一の『ウナギと山芋』のなかの書評「男には書けない本」に、
>早川ミステリひさびさの佳品である。翻訳探偵小説の愛読者は、この、いかにも本場ものらしい長篇小説によつて、長いあひだの渇きをいやされるのではなからうか。
>しかも嬉しいことに、翻訳がすこぶる優れてゐる。(略)
だなんて紹介されてるので、それほど探偵小説を愛読している者ではないが、読んでみる気になった。
その書評は週刊朝日1975年2月28日号のものなんでね、40年以上経過してからそこたどりついたわけで、なんだかなあという気もするが、そういうのもありか。
女性にはふさわしくない仕事である私立探偵になるのは、22歳のコーデリア、まったくのアマチュア。
刑事を退職したベテランのバーニイ・プライドに仕込まれて、共同経営をもちかけられて事務所を設立。
ところが物語の冒頭で、バーニイはガンを患ったことを悲観して手首切って自殺してしまう。
葬式を済ませて、行きつけのパブにいくと、周囲からは、
>「新しい仕事を探すんでしょう? どう考えたって、あんた一人ではあの事務所はやって行けないものね。女には向かない職業だよ」
だなんて言われてしまうが、コーデリアは探偵事務所を続けようと決心する。
孤独な船出となったところへ、微生物学者のロナルド・カレンダー卿から初仕事の依頼が舞い込む。
優秀な学生だった息子のマークが、なんの予告もなく学校をやめたうえに、突然自殺してしまったが、その理由を知りたいというもの。
大学町ケンブリッジへ出向いて、マークと生前親しかった男女に会って調査をするんだが、
>「とにかく、女には向かない職業だと思うわ」
だなんて陰で言われてるのを聞いてしまったりする。
そんなんだから、マークの専攻した歴史の先生に会ったときには、「ぼくは思いますねえ、その仕事は、つまり―」って相手が言い出したときに、コーデリアのほうから「女には向かない職業、というわけですね?」って先回りして言っちゃう。
そんなことしてるうちに、コーデリアは、マークの死は他殺ではないかと疑いをもつが、何者かに脅かされ、襲撃される。
けど、絶望的な苦境におかれても、持ち前の勇気と知恵と体力とで、彼女は這い上がってくる。
事件は意外な展開になるが、そこはまあ古い作品とはいえ、バラしてもしょうがない。
丸谷才一の書評によれば、
>謎の作り方は堅牢で、小説的な興趣は極めて豊かであり、登場人物のあつかひ方は情愛にみちてゐる。ことにすばらしいのは大団円がすんでからの嫋々たる余韻で、読者はおそらく、いかにも探偵小説らしい探偵小説を読んだといふ満足をたつぷりと味はふことにならう。
ということで、私はそこまで絶賛する自信はないが、まずまずおもしろく読み進めることはできた。