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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

青い雨傘

2017-04-23 18:30:58 | 丸谷才一
丸谷才一 1998年 文春文庫版
またまたなんとなく読みたくて、見かけると買い求めてしまう、丸谷才一の古本。
ことし1月だったかな買ったの、読んだの最近、エッセイ集。
初出が「オール讀物」の1992年~1994年というので、わりと新しい。
…25年も前のものを新しいとかいうのはヘンだけど、このへん、こないだ読んだ『裏声で歌へ君が代』なんかが昭和57年というあたりから、ついそう感じてしまう。
個人的な時代感覚はともあれ、なにがどうというわけではないが、おもしろいんだから、いい。
昭和61年5月にカルロス・クライバー指揮のバイエルン国立管弦楽団の演奏を聴いて、いたく感激したのを、
>知的で優雅で、気品があつてしやれつ気があつて、これぞ理想の指揮者といふ気がする。色気があつてしかも貫禄充分なのだ。(p.50「マエストロ!」)
と褒めたたえるとこから始まる一節は、ところがこの指揮者は滅多に棒を振らないし、レコード吹込みに熱心ではないので、なかなか聴くことができないという状況の紹介へとつながる。
なんで、クライバーが仕事をしないかというのは、いろんな関係者の証言を集めてみて、1)怠け者である 2)努力家であり完璧主義者である 3)飛行機嫌ひである 4)子供つぽい性格だ などと推測している。
ここんとこにでてくるクライバーのいろんなエピソードもとてもおもしろいのだが。
話はどこへどう展開するかというと、著者は、クライバーにレコーディングをさせるのには、全世界の小説家および劇作家のなかから何人かを選んで考えさせたらよろしいと言う。音楽業界はもうダメだ、通用しないと。
かくして、マルグリット・デュラス、フレデリック・フォーサイス、ガブリエル・ガルシア=マルケス、ピーター・シェイファー、渡辺淳一の5人を選んで、彼らがそれぞれどうクライバーと交渉するかという想像をたくましくする。おもしろいっす。
どうでもいいけど、今回文中で紹介されてるなかで、読みたくなったのはマーヴィン・ハリスの『食と文化の謎』っていう本、また探さなくては。
コンテンツは以下のとおり。
硬と軟
先輩の話
ラの研究
西郷隆盛
マエストロ!
ベートーヴェンから話ははじまる
鞦韆記
贅沢の研究
尾崎秀実と阿部定
最も日本的なもの
首相の決闘
水着の女
イアン・フレミングと女たち
昭和失言史
醍醐味
椅子について
日本ラーメン史の大問題
カポネ会見記
牛乳とわたし
ゼノフォービア
三栄町遺跡
矢立譚
ハムレット王と孝明天皇
命名論
コメント
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