丸谷才一 一九八四年 朝日新聞社
これは二年前の秋に地元の古本屋で見つけたんだったと思う、持ってない丸谷才一の本だと単行本でも文庫でもなんでも手を出してたころだが。
よく調べてみたら、オリジナルの出版というわけではなく、丸谷さんによれば「編集本」だった。
巻末解題(小田切進)によれば昭和38年『深夜の散歩』から昭和58年『好きな背広』までの評論集・エッセイ集17冊のなかから、「代表的ともいうべき三十五篇を選んで編んだもの」だという、なんだ、つまらない。
ということで長いこと放っておくことになってしまったんだが、なんせ不勉強な私のことだから、読んだことないものもあるだろうと、最近やっと開いてみたら、9篇は読んだことないものだったんで、そこんとこだけ読んだ。
難しそうな評論『後鳥羽院』とかは手を出してないからしかたないとして、『完本 日本語のために』を持ってるのに、そこには省かれた「当節言葉づかひ」なんかがあって、やっぱ『日本語のために』も手に入れとかなきゃなと再認識した次第。
ちなみに書名の「夜明けのおやすみ」については、
>この編集本に収めるたいていの文章は、わたしがまだしよつちゆう徹夜で仕事をしてゐたころに書いたものだといふ意味にすぎない。そのころわたしは、硬軟さまざまの文章を夜どほしかかつて書きつづり、明け方あるいは早朝に書きあげると、倒れるやうに眠つたものだつた。(P.261)
というところからきてると丸谷さんは書いてるけど、徹夜で仕事をしたのは昭和52年くらいが最後だったという。
いまぢゃ「そんな馬力はないから」と、無理な依頼は受けないとしている文章の日付は、「昭和五十八年十一月二十四日午前二時」。
コンテンツは以下のとおり、うしろの括弧内はオリジナルが収録されてる単行本。
I 人生はむづかしい
男の運勢 (低空飛行)
小説家のサービスの話から結婚の回数の話になりました (女性対男性)
写真と味 (男のポケット)
アイスクリーム百杯 (男のポケット)
雨の男は定九郎 (男のポケット)
若旦那の修行 (男のポケット)
岡山に西国一の鮨やあり (食通知つたかぶり)
文学的な庭 (男のポケット)
彼の釣魚大全 (低空飛行)
野坂昭如は確信犯なりや (低空飛行)
菊池武一 (低空飛行)
丸やギ左衛門のこと (低空飛行)
夢判断 (低空飛行)
サッカーは血を荒す (大きなお世話)
アメリカ的美徳 (遊び時間2)
II 探偵小説の楽しみ
フィリップ・マーロウといふ男 (深夜の散歩)
角川映画とチャンドラーの奇妙な関係 (遊び時間2)
ケインとカミュと女について (深夜の散歩)
III 日本語それとも文章
最後の授業 (遊び時間2)
勅語づくし (低空飛行)
当節言葉づかひ
娘たち (日本語のために)
電話の日本語 (日本語のために)
文体を夢みる (共著・私の文章修業)
名文を読め (文章読本)
ちよつと気取つて書け (文章読本)
IV 文学もむづかしい
しどろもどろな文学辞典 (遊び時間2)
香具山から最上川へ (日本文学史早わかり)
花 (日本文学史早わかり)
橋姫 (後鳥羽院)
『細雪』について (星めがね)
退屈を教へよう (コロンブスの卵)
夷齋おとしばなし (日本文学史早わかり)
家の歴史 (遊び時間)
西の国の伊達男たち (梨のつぶて)
なぜ書くのか (遊び時間)
夜明けのおやすみ