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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ホリイの調査(文庫版)

2021-11-21 18:44:55 | 堀井憲一郎

堀井憲一郎 1994年 扶桑社文庫版
前回の丸谷才一さんの文庫本は、合本だと思ったら完全ぢゃなかったんで元の本を買い直したってやつだったんだが。
今回のは、好きな本だと単行本すでに持ってるくせに文庫も買っちゃっうこともあるってパターン。
いや、『ホリイの調査』は確かに持ってるんだけど、去年の秋だったか古本街をさまよってたら見つけてしまって、文庫もあるんだ知らなかったと思った次の瞬間には衝動買いしてしまった、っつーだけのことだが。
(私は見かけたの初めてだったんだけど特にレアではないらしく普通の古本の文庫本の値段だった。)
何か新しいこと増補してないかちょっとだけ期待したが、特に変わってなくて、最後に文庫版あとがき代わりに、「『ホリイの調査』の書評・評」というのがあっただけ。
「書評・評」ってのは、1993年に単行本出たときに雑誌・新聞で17誌が書評・新刊紹介でとりあげてくれたんだが、それを比較検討しているもの。
例によって最後にはランキングをつけるんだけど、これがただの文字数のカウントなんかぢゃなく、「愛の深さランキング」を勝手につけてるとこが、らしいといえばらしい。
1位はなんと『子供の科学』で、インタビューを受けて、しかも破格の3ページの記事になって、さらには「調査といえば、みなさんにとっては、夏休みの自由研究。堀井さんのお話には、たくさんのヒントがあったように思います」なんて子供に呼びかけちゃってるという肯定的な内容。ホリイさんは「だめだよ、こんなのヒントにしちゃ」と言ってますが。
そりゃなんたって、たとえば「川崎球場887人の謎」って何をやったかっていうと、1986年10月16日(木)に川崎球場の消化試合のデーゲーム、ロッテ・南海戦で、調査員4人で出かけてって、双眼鏡と数取り器つかって、観客数を実際に数えてみたって話だ。
ちなみにこの日は外野席が無料開放されてたんだけど、5回表から数え始めて5回裏の時点では、外野515人、内野372人、合計887人が実際の人数だったという。
それで終わりぢゃなくて、翌日の新聞を見るとロッテ球団の発表した観客数は2000人なので、球団に電話した。
(いまは実数を発表するようになったけど、当時はザクっとした数しか発表してなかった。)
訊いてみると、「各入口から4回終わったくらいの入場者数の集計が来るのでそれを使う」、「それ以降どれくらい入るかという見込みも加えて、だいたいの数字を発表する」、「実際には券はもっと売れていて、5000席ぐらいのシーズン予約席というのは売れているわけで、そういうのも加味して発表する」などとツッコむたびに回答がえられる。
「最終的には球団と球場が相談してですね、発表するわけです」なんて答えを引き出して、観客数という客観的そうなものでもあまり科学的でない方法で決められていることがわかった、なんて結論に至る。
この電話で直撃取材するっていうのも、数えるだけぢゃなくて、あらゆる調査の基本にあって、あちこちに同じこと訊いた結果、回答のなかみに応対具合なども加えて、勝手にランキングをこしらえたりするのがおもしろい。
スキー場に「クマは出るのか」と聞いてまわったときの危険度状況1位は、富山・立山山麓スキー場の「見られるってえか、なんか出没しておりまして、そいでもー危険なもので、地元のほうで猟友会の方が出とったりしておりますんで」とか。
動物園に「珍しい動物はいますか」と聞いてまわったときの好感度1位は、釧路動物園の「ヘラジカっていう、シカでは最大なのがいるんですよ。馬ぐらいあります。ついこの間、日本で初めて赤ちゃんが産まれましてね。日本で初めて繁殖して、6ヵ月以上生育しますと、繁殖賞ってのが授与されるんですよ。全国の飼育係の勲章ですね。みんなで挑戦してるんですよ」とか。
百貨店に電話して「屋上には何がありますか」と聞いてまわったときの自慢ランキング1位は、岡山・天満屋百貨店の「えー、遊園地があるんですよね。あのー、観覧車ですか、それがあるし。なんかね、モノレールみたいなもんでカッコイイやつがあるんですよ」で、ほかのところが子供遊びなものしかありませんと恥ずかし気なのに対して「胸張って主張できる明るさがえらい」と評している。
コンテンツは以下のとおり。
川崎球場887人の謎
23区区役所に電話する「マークの由来は何なのだ」
TVを数える
日が替わる瞬間のTV
ビデオテープを探し求める旅
山手線29駅で駅員に乗り換えを訊ねる
山手線29駅の改札を不足キップで突破する
大使館に電話する「国歌を教えてもらいたい」
駅伝美人コンテスト
スキー場に電話する「クマは出るのか」
ロコスキー場に電話する「そこはロコ?」
坂口良子を吟味する
動物園に電話する「何がいるのだ」
ペコちゃんの頭を叩く人
都会のまぬけな待ち時間
政党に電話する「漫画アクションを知ってますか」
昭和天皇の崩御、その時あなたは
映画館に電話する「その名前は何なのだ」
報道TVカメラマンの根性の違い
百貨店に電話する「屋上には何があるのだ」
たけしの首ふり
東京地下鉄1万9887歩の乗り換え
人探し広告の不思議な世界
私家版・コーラ目隠しテスト
編集部の本当の忙しさ
編集部の原稿催促ファクス公開
『ホリイの調査』の書評・評

コメント
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