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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ぼくとフリオと校庭で

2012-02-02 19:31:46 | 諸星大二郎
諸星大二郎 1991年 双葉社
前回とりあげた諸星大二郎には、『天神様』って、“とおりゃんせ”に隠された怖い意味を軸にした物語があったんだけど。
今回のは、そのつづきで(って、著者は、そーゆーの専門ってわけぢゃないんだけど)、『鎮守の森』が収録されてる、この本にした。
たまたま故郷に帰ってきてた男が、子どもたちの“鬼ごっこ”に加わったばっかりに、時空を飛び越えた世界に迷い込んぢゃって、数奇な運命をたどる。
子どもの遊びのもとになった鬼ごっことは何だったのか、鬼に捕まったらどうなってしまうのか。とても怖い話。
神の、というか、共同体の、生贄になる存在は、そのしるしに片目をつぶされる、って一節があって、それって諸星の他の作品の『詔命』とかにも出てくるモチーフなんだけど、この単行本の後書きによれば、柳田国男の『一目小僧その他』の影響だという。

で、どーでもいーんだけど、ついこないだまで、日本の首相が眼帯してたでしょ、その姿を見て、諸星マニアは「あ、一年神主!?」って思っちゃう。
>一年神主とは 村人の中から選ばれて 一年の間だけ神の依坐(よりまし)となる人間(「鎮守の森」から)
共同体の安泰の維持のため、犠牲になっちゃう存在。その余命はあと一年。って、首相がそういう格好してると、ありえなくないかもなって、妙にウケちゃう。

ほかの収録作も、なかなか粒ぞろい、傑作多いよ。
「方舟が来た日」
「難破船」
「鎮守の森」
「ぼくとフリオと校庭で」
「沼の子供」
「流砂」
「黒石島殺人事件」
「城」
「蒼い群れ」
「影の街」

「沼の子供」は、ちょっと変わった、怪異の話。
中米かどっかが舞台で、山の中の沼に、二人の赤ん坊がいるのが見つかる。近づく動物や人は、命を落としてしまう。
生き残っていけるはずはないんだけど、二人は成長していく。土地のひとたちは魔物と信じている。
オチとか種明かしとか、なんの説明もないのが、かえって怖い。
「流砂」は、断崖と砂漠に囲まれた町の話。
若者たちは、この小さな町を脱け出そうとするんだけど、なんだかんだとジャマが入る。
閉じ込められた土地で、ここより他に世界はないと、かたくなに信じ込んで、出ていこうとする者や「外部」を持ち込もうとする者を、異端者として排除しようとするってのは、「夢の木の下で」もそう、「塔に飛ぶ鳥」なんかもそう、諸星作品によくあるテーマ。
「黒石島殺人事件」は、これもときどきある、「藪の中」とはちょっと違うけど、なにが事実・真実か分かんなくなる悪夢のような話。
「城」は、巨大すぎて誰にも全体像が分かんないような、企業グループのなかに置かれた、個人が運命に翻弄されるような話。「商社の赤い花」とかも、会社に命を捧げちゃう話だったねえ。
西王グループの城下町ともいえる西上市に、大西自動車東京支社の若い社員が、グループの中枢である西王総合商事に書類を届けに来たんだけど、中西産業へ行けとか、西海工業の経理を通せとか、あちこち回されてるうちに、何年もの月日がたっていく。

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