今晩は、才村です。
最近の株式市場の話題といえば、画期的なパソコンやゲーム機で有名なS社の業績不振です。しかし、DRAMのE社と違い、多角化、グローバル化しているS社は懐が深そうです。一方、最近株価が低迷している、ゲーム機で有名なN社は、E社と同じく1本足経営です。そこで、両社の有価証券報告書を参照し、最近数年のCFを調べ、比較してみました。単位:十億円、四捨五入。
S社 営業CF 投資CF 財務CF 現金残高 フリーCF CFマージン
(08年3月期) 758 -910 506 1086 -152 9%
(09年3月期) 407 -1081 267 661 -674 5%
(10年3月期) 913 -746 365 1192 167 13%
(11年3月期) 616 -714 -10 1014 -98 9%
(12年3月期) 519 -883 257 895 -364 8%
N社 営業CF 投資CF 財務CF 現金残高 フリーCF CFマージン
(08年3月期) 332 -175 -50 1103 157 20%
(09年3月期) 288 -174 -228 894 114 16%
(10年3月期) 160 -13 -135 931 147 11%
(11年3月期) 78 -154 -102 724 -76 8%
(12年3月期) -95 -164 ―40 407 -259 -15%
⇒S社は10年3月期には、リーマンショックによる業績悪化から立ち直り、現金残高が増えていますが、その後、今年3月末に8950億円と再び悪化しています。S社の悪化原因は、円高の影響と液晶テレビに代表される売上高の半分を占める消費者向け商品部門が、ほとんど利益が出していないことが原因です(12年3月期売上高営業利益率-7%)。しかし、映画、音楽、金融の各部門では、営業利益を出し、補っています。S社はユニークな商品を提供する高収益企業のイメージがありますが、今年3月末の連結自己資本比率は15%です。S社は稼ぐ力が弱っているし、連結自己資本比率も10%台なので、決して財務体質が強固とはいえません。ただ、何代も携帯ラジカセを愛用してきた私には、まだまだS社のブランド力が健在です。
N社は、本体値下げと円高により営業CFが直近でマイナスになり、今年3月末に4070億円まで現金残高が減少しています。しかし、N社はお金持ち企業のイメージ通り、昨年12月末の自己資本比率は87%となっています。多額の有価証券(12年3月末で約4000億円)を所有しているので、そこからのリターンが期待できるし、現金が減っても有価証券を売却すれば、生き延びて行けそうですが、やはりゲーム機の魅力向上が課題です。息子が小学生のころ、N社製品で遊んでいたものの、最近はスマホで遊べるD社やG社の話題はよく聞きますが、わざわざ専用ゲーム機を買うようなN社の話題は聞かなくなりました。E社に対してだけではなく、N社に対してもスマホ普及の影響が出ています。
株価を見ると、
S社は、08年3月約4千円、円が90円台だった10年5月約3千円、今年5月11日1,135円、
N社は、08年3月約5万円、円が90円台だった10年5月約3万円、今年5月11日9,750円
です。両社とも円高の影響が大きいですが、投資家の評価は、やはり、1本足経営のN社に厳しくなっています。