稼プロ!事務局の佐々木(晋)です。こんにちは。先日、久々に映画館で映画を見ました。役所広司さんが昨年のカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した「Perfect Days」です。見ようと思ったきっかけは、ヴィムベンダース監督の作品であったこと。私は若い時、この監督の大ファンでした。
ヴィムベンダース監督の代名詞といえばロードムービー。旅をしながらストーリーが展開していく映画で有名です。数々の名作の中で私が一番好きな作品は1984年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した「パリ、テキサス」。強く愛するが故に妻と息子を捨てた男が、息子と再会したことで彼の母である妻を探す旅に出る話です。
荒涼とした砂漠を走る車。全編にわたって流れるライクーダーのギター。喪失と再生、そして驚きの結末。それまで観てきたハリウッド映画とは全く違う世界観に衝撃を受けました。大学生の時に初めて行ったアメリカ旅行は、「パリ、テキサス」の影響を受けた自動車旅行。航空券とレンタカー以外は一切予約なしで、ロードムービーのような自由な旅を楽しみました。
「Perfect Days」は役所広司さん演じる清掃作業員の文字通りパーフェクトな日々のお話です。まだ上映中の映画なので具体的な内容に触れるのは避けますが、見終わった後にとても清々しいポジティブな気持ちになる映画でした。
役所広司さん演じる清掃作業員は、平凡なルーティンを繰り返す日々を過ごしているように見えます。しかしその生活は、彼にとっての歓びで満ち溢れているのです。採集した植物のコレクション、公衆トイレをピカピカにする職人気質、古いロックのカセットテープ、休憩する神社で写真に撮る木洩れ陽、行きつけの銭湯、などなど。
多くの人にとってそれらは羨むものではないでしょうが、他人がどう思うと彼には関係ありません。その一方で、社会から孤立しているわけでもありません。楽しいことで心が充実している彼は、他人に対しても優しく接することができ、そのコミュニケーションを通じて充実感が増す好循環を生んでいます。
自分にとって最近のパーフェクトデイはなんだったろう?と思いました。思いついたのはつい最近の天気の良い週末です。朝は家の掃除をして自然道をランニング。午後はちょっと昼寝して近所のカフェで診断士の仕事。夜は家族と馴染みの店で食事をし、その後はストリーミングで映画鑑賞。特別なイベントや刺激は一切ありませんが、自分の中ではかなりパーフェクトで、何度も繰り返したいと思っています。若い時はもっとアクティブな人や成功している人を羨むことがありましたが、今はほとんどありません。歳を重ねて自分に対する理解が深まり、他人と比べなくなったことで、パーフェクト感に近づいてきたのかと思いました。
ヴェンダース監督の作品は音楽も凝っていますが、Perfect Daysもロック好きにはたまらない映画です。特にLou ReedのPerfect Dayが流れる朝陽のシーンは鳥肌ものでした。そしてなんといっても素晴らしかったのは役所広司さんの演技です。演じているということを微塵も感じさせないほど、“平井さん”というキャラクターになりきっていました。映画を見終わって暫く経ちますが、このブログを書いているだけで興奮してきました。是非もう一回見たいと思っています。