こんにちは。塾長の鴨志田栄子です。
6日~13日まで、ロシアで講義をしてきました。受講生は現地の方々です。
私は日本語で講義を行い、それを通訳さんが現地語(今回はロシア語)で受講生に伝えます。
独立してから、海外で講義や講演をした回数は30回近くあります。そのすべてかが日本語で話しをし、現地語の通訳がついていました。
現地語の内訳は、北京語、ベトナム語、モンゴル語、クメール語、ロシア語となります。
これらの経験から、海外で日本語で話しをし、現地語に通訳をしてもらうときに心得ておきたいことを以下にまとめてみました。
(1)できるだけ優しい日本語で話す
今回、私はテキストの中で「権限の付与」という言葉を使っていました。事前に漢字を知っていれば通訳さんも的確な通訳ができますが、音声の「付与」は、「不要」と発音が似ています。「権限の付与」と、熟語を用いて説明をするのではなく、「権限を与える」と優しい表現にすることが大切です。「権限の付与」と話しをして通訳さんが「権限の不要」と聞きとったら、真逆の意味になってしまいます。したがって、優しい言葉で話しをするというのは、通訳さんへの配慮にもなります。
(2)できるだけ短文で主語を明確にして話す
通訳を介する場合は、できるだけ短い文単位で区切ると通訳もしやすくなります。(中には、長文で話しをしてほしいという通訳さんもいます)
「アメリカの心理学者が唱えたマズローの欲求5段階説では、自己実現欲求が一番高次元の欲求とされています」
→「アメリカの心理学者、マズローは「欲求5段階説」を提唱しています。」
「彼は、その中で、自己実現欲求を一番高次元の欲求として位置付けています」
(3)外国人の名前は英語で表記する
例えば、Peter Ferdinand Drucker、Frederick Herzberg、Abraham Harold Maslow などです。通訳さんは日本語は分かりますのでカタカナ表記は読めますが、それを現地語に翻訳する際に、英語表記があった方が通訳しやすいのです。
(4)専門用語も英語名称を併記するとよい
英語表記を添えると、現地語に翻訳されても英語表記が残ります。受講生の中には英語を理解している人も多いので、的確にキーワードである専門用語を伝えることができます。
例えば、年功序列制度(seniority system) など
(5)PPTのノート部分に、スライドの説明や専門用語の解説などを書いておく
PPTのノート部分にスライドの説明や専門用語の解説などを書いておくと、通訳さんも事前に講師が話したいことが把握できるので、予習がしやすくなります。
私は、これまでに、多くの通訳さんと出会っていますが、どの通訳さんも事前準備を念入りにしており、その姿勢から多くのことを学びました。上記のことも、通訳さんと行動を共にしていて気づいたことです。
私自身、これらを完璧にこなしているわけではありませんが、できるだけ意識するように心がけています。
以下の写真は、今回の出張での講義風景です。今回は、モスクワ、ウファ、ヴォロネジの3都市で講義をしました。写真は、ウファ(左)とヴォロネジ(右)です。
スタート時は、演台の席に座っていますが、すぐに、受講生と同じフロアに降りて、教室を巡回しながら話すことが多いです。
ウファ、ヴォロネジ
現地の方相手の講義って、「日本」色の強いものなのでしょうか…経営学一般の話ならば、現地にも講師の方いらっしゃるでしょうから。
過去に同時通訳の方達と仕事をする機会が何度かありましたが、彼女たちも それこそ職人ですね。事前にPPT資料程度は渡しておきますが、ブリーフィングも15-20分程度で本番へ。得意・不得意分野はあるでしょうが、複数業界・職域をカバーし、業界特有の言い回しを伝えたり・・・ 2人組でたしか5分交代(でないと、体(頭)がもたないそうで、年齢的にも30代前半が限界 との記憶があります。 技+体力 の意外な世界です。
日本色が強いというか、日本での事例を知りたいという傾向はあります。
今回は、私が行ったセミナーのテーマは、「組織づくりと人材育成」でした。話しの中心は、モチベーションマネジメントになりがちです。
また、私の場合は、同時通訳ではなく逐次通訳です。同時通訳ですと、複数人で、交替でおこなわないともたないでしょうね。
写真に写っている男性の通訳さんとは、これで3回目のコンビ。1週間、ロシアの国内出張、ずっと一緒です。空港で搭乗待ちの時間に、一緒にビールを飲み、夜の食事も一緒に行き(もちろん2人だけではなく、他のスタッフも一緒ですが)、講義以外にもコミュニケーションをとっています。
中国での講演は、同時通訳なので、講演原稿を渡しているため、原稿を読むだけの講演になってしまいます。それは、同時通訳という制約上、仕方ないことですね。
しかし、中国語・韓国語はビジネスのレベルになるとほぼ分からないので、通訳が自分の言っていることを正しく相手方に伝えているか、逆に相手方の言うことをきちんと自分に伝えているか?不安になることが良くあります。
対策として心掛けているのは、通訳に事前にレジュメ等を渡して、意図やストーリーを伝えること、そして何よりも信頼関係を構築できるようコミュニケーションを密にとることです。
それでも考え方や背景文化の違いがあり、完璧な意志疎通は無理と私は考えています。まずは話しの大筋(ストーリー)をお互いに理解することが第一、細かい調整が必要なところは後でメール等で確認すれば良い。最近はそのようなスタンスで中国や韓国企業との交渉に臨んでいます。
私は、通釈さんが、私の力を120%に高めてもくれるし、逆に半分にもしてしまうと思っています。
やはり、通訳さんとのコミュニケーションは、とても大切にしています。初めてお会いした場合は、事前に、テキストの内容で何か、ご質問はないですか?と尋ねて、打ち合わせを持ちます。
通訳さんにたいして、イライラしたりということはまずありません。信頼関係の構築は、基本中の基本ですね。