こんにちは。稼プロ!20期生のながいち!です。
診断士であれ、企業の経営者であれ、社員であれ、いま共通に求められている行動規範はコンプライアンスではないでしょうか。
所属企業において、私は職場の「コンプライアンス教育」担当者です。
月に一度、職場の会議でコンプライアンスに関する話をする機会があります。
工夫しながら進めますが、不正の防止を目的とした「教育」では、ワクワクする話にはならず、参加者も活力や希望が湧く結果にはなりません。
【コンプライアンスの限界】
「社会のルールを逸脱すると個人や組織に不利益が生じ、制裁も受ける。そうならないよう内部統制を整え、トップはメッセージを発信し、職場では教育や話し合いを通じて意識を高める」
一般的なコンプライアンス推進の枠組みとは、以上のようなものであり、多くの企業がコンプライアンスを優先した経営を打ち出しています。
しかし、法令であれ社会的な要請であれ、他律的な基準に対応する、受け身かつ守りの活動では、取組みに限界があると考えます。
不正(正しくない行動)が発生しにくい、管理の行き届いた組織文化にすることはできても、正しい行動を増やすことのできる、創造性のある組織文化に進化させるのは難しいのではないでしょうか。
コンプライアンスという概念が醸し出す、受動的、消極的、否定的なニュアンス。
もっと前向きなアプローチはないのかという想いから、調べ、考えてみたのが、今回のブログです。
【インテグリティ】
大企業の例になりますが、一部の企業は、コンプライアンスだけで社員を導くのは限界があると考えているようです。
二つのアプローチがあることが分かりましたので、ご紹介します。
第一のアプローチは、「インテグリティ」(Integrity)という、コンプライアンスを補完する概念の導入です。
直接的な訳語は「完全であること」。「高潔さ」「真摯さ」「誠意」とも表現されます。
三井物産株式会社は、行動指針のタイトルを「With Integrity」とし、
「企業人としての良識や品格、すなわちインテグリティに照らして、自らの言動に誤ったところがないかを常に検証する姿勢を持つことが極めて重要です。」
と社内に語りかけています。
ルールを常に所与のものとして遵守するのではなく、自らの内にある考え方・感じ方の基準に問いかけることが求められます。
効果としては、能動的、積極的、肯定的に、人が関わることが期待されるでしょう。
インテグリティは、経営学者のドラッカー氏がマネジャーに不可欠の資質として言及している概念です。
書籍(『現代の経営(上)』)で充てられている訳語は「真摯さ」。
その定義は難しいとしながら、「真摯さ」が欠如している人材の例を挙げています。
・人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
・「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者
・自らの仕事に高い基準を定めない者
インテグリティの難点は、カタカナ語である点です。
馴染みが薄いため、Integrityという原語にどれだけの意味が込められているのか、見当がつきません。
【創業期の哲学】
第二のアプローチは、企業理念あるいは基本的な価値観として堅持されている創業期の哲学が、コンプライアンスの上位にあることを示す方法です。
企業固有の行動原理を示し、社員の行動の軸を明確にしています。
例えば以下のとおりです。
〇丸紅株式会社
上位概念: 社是 「正・新・和」の「正」
今の解釈: 公正にして明朗なること。
(社是に基づき、丸紅スピリット「常に迷わず正義を貫け」を定めている)
〇三菱商事株式会社
上位概念: 三綱領の一つ 「処事光明」
今の解釈: 公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する
〇花王株式会社
上位概念: 創業者の言葉 「正道を歩む」
今の解釈: 法と倫理に則って行動し、誠実で清廉な事業活動を行うこと
いずれも「何をしないか」ではなく、「何をするか」が簡潔に語られています。
【真摯さ、誠意】
以上、コンプライアンスの推進では得られない、社員の自律的な行動や組織文化の進化に繋がるアプローチがないか見てきました。
私として、しっくりくるのは、インテグリティの訳語ともなっている「真摯さ」や「誠意」の追求です。
重要と考える点は、「真摯さ」や「誠意」を規範に据えることで、「この言動は誠意があると言えるのか」と自らの内にある考え方・感じ方の基準に問うプロセスが生れるということです。
組織としては、一人ひとりの基準が違いすぎていると混乱します。職場単位で目線合わせをする場をつくり、コミュニケーションを図ることが重要になるのでしょう。
組織は人の集まりですが、一人ひとりが自分自身に問いかけ、相互に目線合わせをするなかで組織文化が進化するように思います。
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