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発見したけど、どうする?

2020-08-28 12:00:00 | 20期生のブログリレー

稼プロ!20期生のながいち!です。

20期生のみなさんは、東京都診断士協会のコンプライアンス研修を受講しましたか?
私は、先日e-learningで受講しました。
受講により理解できたのは、中小企業診断士の仕事の現場では、どのようなことがコンプライアンス上問題となるかです。

例えばこんなコンプライアンス

「コンプライアンス研修Q&A」に書かれていることの一端を紹介します。

Q:公的機関の専門家として支援先での支援終了後、経営者が「ついでだから駅まで車で送ります」と言われた場合、それを受けることに問題はあるのか。
A:公務員(みなし公務員含む)が、利害関係者が特別に用立てたタクシーや社用車を利用することは認められないとされています。

微妙ですね。「ついでだから」の言葉の意味を瞬時に察して、経営者の言葉に甘えるか断るか、判断しなければいけません。

もう一つのQ&Aを紹介します。

Q:協会の事業における診断先の事業者において、コンプライアンス上の違反行為を確認した場合協会へ報告は必要か。
A:協会のコンプライアンスに関する制度は、会員診断士が対象であり、診断先のコンプライアンスに関しては対象外です。また診断先の機密保持の観点からも協会への報告は不要です。仮に診断先でそのような事案に接した際は、事業者を適切に指導してください。

そうか、指導が必要なのか。しかし、経営者の懐に入って支援を行う診断士は、ズバッと問題を指摘できない場面に遭遇することがあるだろうな、と思いました。

販売与信管理の現場

さて、私は業務として販売与信管理の担当をしていた時期があります。
新しい顧客との取引開始(掛売り)にあたっては、顧客から決算書を入手し、財務分析を行って、申請のあった与信枠が適切か判断します。
また、取引開始後も毎年決算書を入手して、顧客の財務状況の変化を確認するのがルーティンです。

営業担当者が、ある古くからの顧客(「〇〇商事」とします)の最新決算書を持ってきたので、それを診ていたときのことです。
最終損益が若干の黒字(1百円)であることを確認し、ホッと一息。
ところが、数字を分析用フォーマットに入れてみたところ、損益計算書では利益がでているのに、剰余金は前年度末から何千万円も減少している、変な決算数値であることに気づきました。
株主資本等変動計算書が付いていなかったため、○○商事に問い合わせましたが、なかなか答が返ってきません。
そこで営業担当者と〇〇商事に出向き、社長と経理部長に説明を求めることに。
結論は・・・・、予想通り粉飾でした。
粉飾テクニックとしては、前年度と比較すればすぐ露見する稚拙なレベルです。
税理士が作った正しい決算書は別にあり、金融機関にはそれを提出。一方、取引先には経理部長が手を加えた「修正版」を渡していた、との顛末でした。
海外子会社の破綻による特別損失があった、とのこと。「それを加えると大赤字になってしまう。取引先に知られて、与信枠を絞られると資金繰りに困る」と考えたうえでの、経理部長の「工夫」でした。
信用を供与した相手を騙そうとした顧客です。
個人的には取引停止にしたかったのですが、所属会社の決裁は、諸般考慮のうえ「以後は前金取引のみ」となりました。

実務補習にて

実務補習や実務従事(以下、どちらの場合も「実務補習」と書きます)では、診断先の決算書を診る機会があります。
ここで書いたようなケースは、さすがに無いでしょう。
ただ、数年間の決算データを横に並べたとき、次のような事例は実務補習の「(たまに)あるある」ではないかと思います。

① 社長の話に基づくと、毎年一定額が発生するはずの費用項目なのに、ある年に大幅に金額が減って、翌年に大幅に増えるケース。
② ある年の売上総利益率が急に高くなっていて、実務補習の財務担当が社長に理由を質問したが、きちんとした答えが返ってこなかったケース。

実務補習のメンバーは、良識として、それ以上の突っ込みをしません。
なぜなら、実務補習の場が、指導員の先生のご尽力と企業のご厚意で用意されているからです。債権者ではないし、監査法人でも、税務署でもないからです。
多くの場合、その経理処理には正当な理由があるのでしょう。
しかし、中には金融機関を意識した益出し対策や、節税対策の現れのケースもあるよう思われます。
違法ではないと信じたいところですが、税務調査があれば引っかかる事例も、もしかすると含まれているかも知れません。

実務補習先の一つに、従業員はソコソコの人数がいるにもかかわらず、社長が「規則嫌い」で就業規則のない企業がありました。
社長は、従業員がルールに従う意識が強くなり過ぎることを憂い、従業員が自分の頭で考え自律して行動することに、心を砕いておられる方でした。
業績は順調。(社長の話では)従業員とのコミュニケーションは密に実施。
診断レポートではそのことを「強み」とし、就業規則がないことを「弱み」として記載しませんでした。機密保持の観点です。
指導員の先生は「就業規則は作られた方が良いですよ」と、きっちりコメントされていました。

企業に寄り添う

税理士ほどではないかも知れませんが、診断士も、顧問先との関係が近くなればなるほど(寄り添えば寄り添うほど)、コンプライアンスの観点から難しい局面に遭遇するときがあるものと想像します。
債権者サイドに立てば利益操作は望ましいことではなく(粉飾は法令違反)、従業員サイドに立てば就業規則がない職場は決して良い環境と言えません。
良い診断士とは、診断先にコンプライアンス上の問題やグレーな状況があることを発見した場合は、それを見過ごさず、勇気をもって、経営者を強く指導できる診断士でしょう。
ただ自分ゴトとして考えると、その時の立ち位置によっては、どこまで適切に指導できるだろうかと少し心配になりました。

 


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (春島一男)
2020-08-28 12:42:00
「コンプライアンスの観点から難しい局面に遭遇」
今後、顧問先が増えてくれば、確かに増えてきそうです。
経営者に寄り添いつつ、適切な助言が行える診断士になりたいですね。
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Unknown (おのだ)
2020-08-29 08:02:03
研修での役に立つお話しをシェアいただきありがとうございました。私も研修を受けていますが、最初の質問はQ&AのAがOKなのかNGなのか判断つきませんでした。ついでならば「OK」、特別に用立てた場合は「NG」という理解で良いのでしょうか?
返信する
Unknown (青木 洋輔)
2020-08-29 08:39:32
私は金融営業の現場サイドに長らく居りましたが、コンプライアンスは正しい知識と自分に克つことの2つが重要だと思っています。(組織としては、プラス厳正な処分でしょうか。)本当の意味でお客様のためになることは何か考え行動する、難しいですね。
返信する
Unknown (岡田 英二)
2020-08-29 13:34:35
奥深いお話ありがとうございました。
協会のコンプライアンス研修というのは初耳でした。
私もぜひ受けてみたいです。
コンサルタントとして相手と向き合っている時、コンプライアンスの取扱いは難しいですね。
厳しい指摘もしっかり相手の心に届けられるコミュニケーションスキルを身に付けたいものです。
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Unknown (ながいち!)
2020-08-29 20:13:35
春田さん、おのださん、青木さん、岡田さん

コメントをありがとうございました。

コンプライアンスQ&Aについては、おのださんのように私も理解しました。ただ公式Q&Aとして、「●●●●●は問題があるか」というQを設定するのであれば、「□□□□□の場合は問題がある」が「△△△△△の場合は問題がない」との形式でAを記載した方がよいのではないか、と個人的には思います。

青木さんのおっしゃるように、お客様に製品やサービスを届ける前に、まず関連業法の正しい知識やビジネス法令の全般知識が重要ですね。
診断士の場合は、クライアントの経営を支援する立場。少なくとも経営法務で学んだ範囲で、経営の一項目(大前提)としてクライアントのコンプライアンスを常に意識にとめ接することが、大事ではないかと思います。
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