あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

高橋源一郎著「高橋源一郎の飛ぶ教室」を読んで

2023-03-09 14:36:07 | Weblog

 

 

照る日曇る日 第1868回

 

源ちゃんが毎週金曜の午前中にやっていた「すっぴん!」というラジオ番組は時々聞いていたが、それが突然無くなったあと、2020年春から始まった「高橋源一郎の飛ぶ教室」はあまり熱心なリスナーではなかったので、本書を手に取ってみました。

 

番組の本編のダイジェストかと思ったらそうではなく、冒頭の短い3分間の語りの集積だというので、ちょっと馬鹿にしていたら、これが塵も積もれば富士山となるで、ほろりとさせられるようなこぼれ話が陸続と登場するので、さすが作家、さすが源ちゃんと声には声を掛けたくなるようないい読み物でした。

 

何を紹介していいのかまだ分からないのですが、高橋選手がデモでパクられて牢屋に入っている大晦日に、顔も見えない同牢人たちとアカペラ紅白歌合戦をやらかし、源ちゃんが「恋の季節」を歌ったなんて好い話だと思いませんか?

 

鎌倉らしい話題は彼が奥さんと一緒に貝殻拾いをした話。由比ガ浜の海岸では別になんてこともなかった貝殻が、帰宅してお皿の上に載せられると「燦然と輝くように見えた」と記す源ちゃん。流石に作家ですね。

 

作家といえば、彼が作家になれたのは、「さようなら、ギャングたち」を激賞した吉本隆明のお陰だったという話は有名ですが、その恩人の役を穂村弘に対して演じたのは源ちゃんでした。彼は、石田比呂氏によって全面否定された第1歌集「シンジケート」を「俵万智が三百万部売れたのなら、この歌集は三億冊売れてもおかしくないのに」と評して援護射撃したのです。

 

巻末の「さよならラジオ」は8年間続いた「すっぴん!」の創始者にして非業の死を遂げた元ディレクター山田隆志氏に捧げるレクイエムですが、しみじみと心に迫ります。

 

 「ルビコン」てふ名前のジープを御しながら夜河を渡る君はカエサル 蝶人

 

コメント
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