あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

「夢は第2の人世である」第129回

2023-10-06 10:36:25 | Weblog

西暦2023年皐月蝶人酔生夢死幾百夜

 

電車に隣り合わせに座った男は、自分が惚れた女の鼻が、さながらピノキオの鼻であることに気づき、女は、惚れた男の唇が、ホッテントットのように分厚いことを知って興冷めし、かくて百年の恋も一瞬にして終わったのであったあ。6/1

 

幸い自宅が大学の坂下にあったので、私は試験日には弁当を持って早朝から坂道を登っていくと、暗闇の中で受験生たちが蠢いていた。大学の正門をくぐると、学生たちがブラックエンペラー集会を開催していた。6/2

 

試験を受けている最中に空腹を覚えたので、風呂敷をを開いて日の丸弁当を喰っていると、父から「試験ぐあんばれよ」という電話をもらったのだが、死んでから半世紀以上経って、史観会場でそんな電話を貰ったことが、不思議でならない。6/2

 

僕らは解雇される前に、一人前のデザイナー&ディレクターとしての仕事がやれる技量を、身につけさせてもらいたい、そうなったらいつレイオフされても結構だと喰い下がったのだが、テキがは、そんな都合のよい主張を認めるような甘い経営者ではなかった。6/3

 

原宿本社の5階の突き当たりに、来日して展示会を開いたデザイナーのペリー・エリスが、通訳のサトウケイコ嬢に付き添われるようにして立っていて、マスコミの取材を受けているのだが、彼の顔は逆光になっていて、よく見えない。6/5

 

同じ5階の反対側のエレベーターの前に1台のレッテラ・ブラックが置いてある。米国最古の婦人衣料ブランド「ボビー・ブルックス・オブ・ニューヨーク」を担当する英語の堪能な課長が、中目黒のレナウンルック社に移転するので捨てたのだろうが、勿体ないので拾っておこうかと迷う。6/6

 

来客があるというので、1階の正面玄関まで降りていくと、葉山に住んでいるという写真家のブルース・オズボーン氏が井上佳子さんと一緒に立っていて、「このビルはガンダムに似ているので撮影したい」というので、「どうぞどうぞ」と答えて、彼が撮影するのを見ていた。6/7

 

余は反乱軍の仲間たちと、専権王の軍隊に向かって突撃していたが、ドンキホーテに扮した指揮官のアランドロンが、行手に立ち塞がったので、余は踊り上がって、彼奴の胸に両手に持った短剣を突き刺して、息の根を止めてやったのよ。6/8

 

おらっちは、ついにそいつの居所を突き止めて、夜中に忍びこんで、そいつを布団丸ごと縛り上げて、そいつの心臓のところに、「返り忠の鼠」の印を、つけてやったのよ。6/9

 

おらっち藤井名人と対戦中なんだが、藤井選手がお馴染みの大長考に耽っている間に、おらっちの手足のさきっちょから、頭のてっぺんのところから、どんどんどんどん溶け始めたので、こりゃまたどうしたことかいなと、焦りに焦る。6/10

 

突如、異次元男が、「万事を放擲して、3年半永平寺で修行する!」と宣言したので、全国民が「それはなによりの朗報!」と、喜んだのなんの。6/11

 

お馴染みのリヴァイアサン選手がでてきて、おらっちの前に、面白そうなオモチャを投げ出すので、みな寄ってたかって、奪い合うのだ。6/12

 

夜の公園の中に、大勢の外国人家族が座っている。住むべき家のない彼らは、昼間は客のいない百貨店などをブラブラし、夜はここで野宿して、何カ月も過ごしているのだ。6/13

 

ある会社のリーマンでありながら、某製作会社に頼まれて同業他社のTVCMを企画制作したら、これがなんとカンヌでCMグランプリを獲ってしまったのだが、おらっちが授賞式に出る訳にもいかず、うれしいような悲しいような、不思議な気持ちずら。6/14

 

それがどんなに古くても、その写真の中のどこかのポイントを押すと、そのポイントが拡大されて3次元のカラーの動画が展開される画期的なシステムを発明したのだが、はてさて、これをどうしたらいいものか?6/15

 

久し振りに横須賀のヴェルニー公園を散歩していたら、ヒロ君一家とぱったりでくわした。ヒロ君は商売繁盛で、奥さんと2人の子供も元気そうなので、安心した。6/16

 

わたしらは何日も何日もスタジオに籠って音作りをして、「アレ」が訪れる、あの聖なる瞬間を待っていたのよ。6/17

 

交響曲のはじめと終わりの数小節だけ聴けば、それでその真価が分かるような気がしていたのだが、現代音楽のライヒやグラスなどは、いくら聴いてもさっぱり分からなかった。6/18

 

その老舗旅館に泊まると、夜寝るときに枕を持った美貌の男女が現れ、望めば夜伽をしてくれるというので、国内外の旅行客からの圧倒的な人気があった。6/19

 

夜中にトイレに入ったら、「倍、倍、倍」というて、オシッコがいっぱい出て来たので、驚いた。6/20

 

大量の粗大ゴミを、今すぐ名越の焼却センターへ持っていかねばならんのだが、あんな急坂まで、このオンボロ自転車で運べるだろうか?6/21

 

第2営業部で打ち合わせをしていたら、ムロタ課長の似顔絵を描いてくれと頼まれた。「おらっちの所属は宣伝課だが、デザイナーではないから描けない」と固辞したんだが、「どうでも描け描け!」と迫って来て、とうとうムロタ課長がお馬に乗ってハイドウドウの大騒ぎだ。6/22

 

トントンと釘を打っているような音がしたのは、私が横たわっている棺桶の蓋をしているのだと、今頃になって気づいた。6/23

 

ド田舎の取手で開かれている息子の展示会場は高層ビルの7階にあるので、エレベーターに乗ったら、息子の担当教授が一緒に乗り込んできて、さんざん息子の悪口をいうので、反論しようとしたらさっさと降りてしまい、代わりにシャワーを浴びた素っ裸の男の子が乗り込んで来た。6/24

 

僕らの「いかすぜバンド大会」が始まった。おらっちが演奏するのは、もちろんジュリア・リンカーの「あたいのワンコを起こさないで」と、「バリハイ」の特別ヴァージョン。んでアンコールは、勿論近田春夫&ビブラトーンズの本邦初のラップ「いい女ってなんで、こっちに来ないの」(「AOR大歓迎」所収)だ。6/25

 

私は我ながら卑劣な振る舞いをしてしまったことを、今頃になって悟って、フマ君に謝ったが、どうやら謝るべき相手を間違えたようだった。6/26

 

その親切なおばさんは、「具合悪い体で、そんな急な階段を降りたら、躓いて階段の下まで落下してしまう。早く手すりをつけなさいよ」というて、お金まで送ってくださったので、手すりができて、とても重宝しているずら。6/27

 

おらっちの不用意な発言で、本来ならシャンシャン大会であるべき株主総会が、大荒れに荒れてしまったので、おらっちは花形の総務部の株式担当からはずされ、資材購入係に降格処分されちまったぜい。6/28

 

どんどん右の眼が見えづらくなってくるので、蔵並眼科を訪ねて、一日も早く手術してくれと頼んだが、「あーたは前回の手術を勝手にキャンセルしたから、どこか他をあたってくらさい」と、言われてしまったずら。6/29

 

おらっち焦ってラグーン社の塹壕にタラコをぶら下げておいたら、いつの間にかバクダン虫になってしまって、みんなが寝静まっている時に次々に爆発したのよ。6/30

 

  アマゾンに13冊残る我が詩集誰か買わんか誰も買わんか 蝶人

 

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