あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

夢は第2の人世である 第130回

2023-10-30 14:07:47 | Weblog

 

西暦2023年文月蝶人酔生夢死夢百夜

 

血の杯を呑み干して、あれほど固く兄弟の契りを交わしたにもかかわらず、俺たちの反乱は未遂に終わってしまったが、それは拷問の脅しに負けて、俺たち全員があっさり自白したからだった。7/1

 

小学館の「小学1年生」から「小学6年生」の6誌に、「よいこ」「めばえ」などを含めた幼児学年誌の全編集長が、我が家にやって来たので、とりあえず皆さんを風呂場に案内したのだが、狭いうえに、風呂椅子も洗面器も足らないので、抗議の声が殺到している。7/2

 

一晩中、全世界をうろつき回ってみたが、どこもかしこも、おらっちに適した居場所とは、到底感じられなかった。7/3

 

五反田のTOCを覗いてみたら、JCの展示会をやっていて、そこに新年度の宣伝計画表が掲示されていたので、にゃろめ、担当のおらっちに相談もせず、勝手なことをしやがって、とドタマにきたので、伊藤忠に文句を言いにやってきたところだ。7/4

 

A将軍によって完全に包囲されたB将軍の軍勢は、降伏するか全滅するかいずれかだと誰しもが思ったのだが、一夜明けると、彼らの陣営はもぬけの殻となっていたので、A将軍はあっけにとられた。7/5

 

「万事絶不調なのに、どうして「万事快調」なんて詩を書くの?」と訊ねる人がいたので、「万事絶不調だからこそ書いたんだよ」と、答えたのだが、どうも分ってもらえないようだった。7/6

 

「詩のようなものの書き反故ですが」と、いうて、どっさり半紙を送ってきたのだが、一枚一枚読み進むうちに、端倪すべからざる傑作揃いじゃなあ! と、思えて来たのだった。7/7

 

おらっちが出したお弁当箱くらいの大きさを、米粒くらいの細かい活字で埋めた、一巻物の大詩集を、一夜にして読了してしまったので、「完読賞を下さい」と迫られたので、仕方なく授与して差し上げたのだった。7/8

 

「1枚千円展」という展覧会に行ってきた。展示作品のどれでも1点千円で買えるという、いまどき珍しい大胆不敵な販促キャンペーンが功を奏して、押すな押すなの大入り満員の大盛況だ。7/9

 

長い長い大旅行からひさかたぶりに帰国したので、愛する家族への土産も半端ない数量にのぼった。余は暗い三畳間の30ワットの電球を捻って明りをともしながら、老いたる父母、一足飛びに大人になった弟妹のためにボストンバッグの中から手品師のように次から次へと土産物を取り出していった。7/10

 

ミッドウエイで撃沈されて、いままさに沈みそうな空母のブリッジに、最後の最後までぶら下がっていたら、生きて帰れば陛下から特別報奨金が下賜されるというので、我われ水兵は、母艦が沈没してもまだ必死に食らいついていた。7/11

 

やはり関東大震災が勃発し、東京は完膚なきまでに壊滅し、消墨色の灰燼と化したので、京急は、焼け焦げた無蓋の矩体を乗せた馬車を、三浦半島の端まで、定期バスの替わりに運行させている。7/12

 

おらっち、パリコレのプレタのモデルを頼まれていたのだが、余りの暑さに、スケジュール帖が、脳味噌の中で蕩けて腐ってしまったので、無断欠席となって、除名処分を受けちまったよ。7/13

 

わいらあ国際義勇軍は、ウクライナを支援しようと、空路はるばる戦場までやって来たのだが、ロシア軍の猛烈な爆撃に、息も出来ずに、タコつぼに潜んでいることしかできなかった。7/14

 

岐阜の大垣という所に来ているようだ。その山奥にある大滝の源泉を捜しながら、急峻な坂道を登攀しているのだが、普通なら、あともう少しで頂上というところで、滝から流れ落ちる水流と共に、麓まで落下してはずなのだが、幸いなことにおらっちは、パラシュートを身につけているのだ。7/15

 

ウクライナ戦争とガザ突入即時停止、世界平和即時実現、日米安保条約即時解体を祈念して、私らは、向こう三軒両隣、別に談合した訳ではないが、やってやって、やりまくったのよ。7/16

 

暑くて暑くてどうにも寝つかれないので、大弱りしていたが、ふとセイユーのレジのクレジットカードを入れる際の侵入角度を参考にして体位を変えてみたら、みごとに嵌ってスイスイ寝られたのよ。7/17

 

ボクは今日26歳の誕生日を迎えた選手に、「誕生日おめでとう!体に気をつけてガンバ!ガンバ!」とエールを送ると、ヒジョーに喜んでいた。7/18

 

その大書店のいちばん先のひら台の上に、私の詩歌集がどっさり積まれているので、驚いていると、どこからか子供が出てきて、それを玩具にして遊んでいるので、もっと驚いてしまったずら。7/19

 

サントリーの入社試験会場に来てみると、出された問題は、イヌの育て方と飼い方についてであったが、半分以上は、イヌ愛に満ちたイヌ学のお勉強だった、中にはヘナ、ナカという名前の品種もあったが、ともかく全員合格の目出度い試験だった。7/20

 

過日、北原博士一家は、長男が大麻を吸引していたというので、あろうことか家族全員が築地署の頑丈な牢屋に入れられ、歌舞伎座帰りの暇人の好奇の眼の晒し者にされた、というのだが、酷い話だ。7/21

 

剣闘士の私は毎日ローマの円形闘技場で食うか食われるかの殺し合いをしていたのだが、だんだん厭になってある日仲間と相談して殲滅一歩手前の八百長試合を敢行したのだが、

コロシアムをうづめ尽くした観客が怒り狂って殺せ、殺せの大合唱が沸き起こって諸共に殺されちまったのよ。7/22

 

当初村の主だった連中からは、「文月は革命に適さないから、葉月に延期しろ」と何度も忠告されたのだが、わいらあ若衆連は、かえってそれに反発して、筵旗を立てて総決起したのだが、案の定、準備不足で大失敗してしまったずら。7/23

 

えらくひもじくなってしまったが、なにせ夢の中であるから、なにも食えないので、じっと我慢しているのら。7/24

 

「あける」、「いのる」、「うむ」、「えぐい」「おこる」「かむ」、「きる」「くすぐる」「ける」…。ビデオショップに行くと、おらっちが企画した<あいうえおシリーズ>が、ずらりと並んでいたが、売れた形跡はなかったずら。7/25

 

ある女の一生について書いたが、やはり文字だけではなく、写真なんかを入れた方がさまになると脇から言われたので、そうしようとは思うのだが、残念ながらその材料がないのだ。7/26

 

私の小学時代の同級生だが、いまだもって独得の民族衣装を纏っているのだが、それがどこの民族なのか、私も本人も知らないのだ。7/27

 

ゴダールとロメールが共同編集して巴里で2年間だけ出ていた「ル・シネマ」という映画雑誌が物置から出てきたので、とりあえず表紙だけ撮影したんだが、これって「なんでも鑑定団」に出してみる値打ちがあるだろうか。7/28

 

A国のさる土地をB国が基地にしたので、それをC国がとがめて、「おらっちにも基地にする土地を寄越せ」と恫喝したので、A国はB国の基地の隣の土地をC国に与えてしばらく様子を見ることにした。7/29

 

真夏日の朝の光の中で、深紅の薔薇の花弁はいつまでもいつまでもハラハラと水の上に落ちるのだった。7/30

 

開高健のことを書こうとしていたのだが、いきなりタイトルを「開高海○」としたものの、○の個所にどんな漢字をもってきたらいいのか、いくら考えてもてんで思い浮かばないので、結局開高健論は没になってしまったずら。7/31

 

  カタバミの黄色い花にしがみつくヤマトシジミに吹く風やまず 蝶人

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする