The Storyteller / Ray Davies (1998)
自伝「X-Ray」を発表したレイ・デイヴィス(Ray Davies)が朗読と音楽でデビュー後までの自伝をたどるソロ・ライヴを編集した企画盤。実際のライヴがどのように行われたのかよく知らないが、これがかなりの力作。朗読部分が分からないと魅力が半減するだろうと思って、訳のついた邦盤を購入したが、出来れば朗読部分だけでなく曲にも訳詞を付けて欲しかったな。
デイヴィス家の歴史(つまりは戦後イギリスのワーキング・クラスの大衆史)と女性ばかりの大家族に生まれたレイと弟デイヴ(Dave Davies)が音楽を志し、キンクス(The Kinks)としてデビューする頃までがレイの語りと代表曲のアコースティックな演奏でヴォードヴィル・ショーのように綴られていく。レイの語りがなんともいい。全体としての構成も見事で、どんどん引き込まれていく。訳詞じゃなくってネイティヴだったらもっといいんだろうな…。遅れてきたファンとはいえ、今まで聴いていなくて本当に情けないことをした。
以前からずっと(活動していない今も?)犬猿の仲として知られているこの兄弟なんだけれど、ここではレイによって愛情を持って語られている。お兄ちゃん、偉いゾ(笑)。
このレイの家族もそうだし、ストーンズ(The Rolling Stones)やフー(The Who)のメンバーの歴史を知っても思う事だが、この戦中~戦後世代のイギリス大衆に音楽がどれだけ根ざしていたのかを知ると意外なほどで、地域にもよるだろうが戦火の悲惨な状況の時でも音楽を愛し、日常の楽しみとしていた事がよく分かる。ま、そういった音楽に囲まれた家族の一員がミュージシャンを目指したとも言える訳だけれど。
オークションにて購入(¥713)