神田神保町の古書店街をひと廻りして脇に入ると、短いけれど胸がワクワクする路地がある。本探しがひと段落した人達の憩いの場といえば喫茶店だが、この路地にはとびきりの歴史がある店が2軒。以前は「ラドリオ」に伺ったが、今回はその斜め向かいにある「ミロンガ・ヌオーバ」を訪問。創業は昭和28年(1935)という老舗で、ラドリオと同様に、煉瓦造りの外観は雰囲気たっぷり。路地に溶け込んで、これ以上ないような特別な一画になっている。店に入ると、長い年月を経てきた店にしか持ち得ない落ち着いた雰囲気と照明で、古くてもしっかり手入れされていることが分かる。入って左にある大きいテーブルの席に腰を下ろし、メニューを眺める。喉が渇いていたので爽やかな口当たりのものをとドイツのレーベンブロイを注文。看板にある通り、こちらは珈琲だけでなく、世界のビールを数多く揃えているのだ。
ラドリオがシャンソンなのに対して、こちらはアルゼンチン・タンゴが流れている。そんなそれぞれのこだわりが面白い。店内には本を拡げている人も何人か。きっと古書店で手に入れた戦利品を見返しているんだろう。きっと一番楽しい時間だろうなァ。自分は本こそ手に入れていなかったが、その前に中古CD屋で手に入れたCDを手に取って何するでもなく眺める。そんな何もしない時間が楽しい。スキっとした口当たりのレーベンブロイはあっという間に喉を通り過ぎた。わざわざ出向くまでもないが、こういう店がいくつも隠れているのが神保町の魅力。コーヒー・チェーン店もいいけれど、こんな店があることを知っていてわざわざ行こうとは思わない。(勘定は¥600)
↓ ミロンガ・ヌオーバのコースター
東京都千代田区神田神保町1-3
(神保町 ミロンガ ヌオーバ ヌォーバ)