銀座で呑んで、宿に帰るために新橋駅方面へ。大して量は呑んでいなかったので、もう一軒どこかにと選んだのが、新橋駅ガード下の「羅生門(らしょうもん)」。アーチ下の佇まいがたまりません。昭和22年(1947)の創業とのこと。当時、新橋駅の周辺は闇市だったから、ここもそのうちのひとつだったのだろうか。ちなみに駅前の「ニュー新橋ビル」はその頃の闇市の店を整理して入居させたビルだとのこと。この辺の事情を調べると、「関東〇〇組」とか「三〇人」とか「〇〇の女王」とかまるで映画のような話が出てきて興味深い。こういうガード下の賃料や権利とかってどうなってんだろうと想像が膨らむ。
それはさておき、吹きっさらしのカウンターに着席。でもガード下でうまく風が遮られているからか、さほど寒くはない。広くない店内には男ばかりの店員が5名ほども居て活気があるが、遅い時間とあって客も少し引けた頃で、そろそろ店じまいの時間になるとの事だったので、すぐに冷や(常温)の「両関」と、レバー焼、なんこつ焼(2本づつ)を注文した。冷やは升+ガラスコップ。見回してみると壁に貼られた品書きはけっこう多彩。時間があったらゆっくり試してみたいところだけれど、すぐに「そろそろラストオーダーになります」と釘を刺されてしまったので、追加で当店特製と書いてある「しのえ焼」を注文。「しのえ」が何かはもちろん全く知らない。焼鳥屋の大将を絵にかいたような風体の主人(たぶん)が陣取る目の前の焼台は、紀州備長炭を使っているそう。先に届いたなんこつはしっかり脂が落ちて、グキグキとした食感が旨い。正体を知らなかった「しのえ」が何だったかというと、いわゆる手羽餃子だった。かぶりつくとパリッとした皮から脂が飛び散るくらい熱々で、もちろん旨くない訳がない。なんでガード下で呑むとこんなに旨いんだろう…。最近巷ではものすごくしっかりプロデュースされた立飲みの店やバー(バル)が数多く出来てきたが、中年の自分にとっては、やっぱり雰囲気とか風格とかに欠けるんだよなァ。そういう店も今後歴史を重ねる事が出来るだろうか。なんて思っている間に店の片付けが始まったので店を出た。(勘定は¥1,300程)
※閉店している模様です(令和2年現在)
羅生門
東京都港区新橋1-13-8
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