歌舞伎「錦秋名古屋顔見世」(10月13日・名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール)
恒例の歌舞伎観劇。錦秋名古屋顔見世を観るため金山(かなやま)へ。以前、関東の友人をして「名古屋の暑さは何だか特別」と言わしめた気候も、めっきり涼しくなって本当に過ごし易くなった。15時30分開演、終了は20時という夜の部なので途中でお腹が空くかもと、近くで持ち込みの軽食とお茶を購入してホール内へ。連休明けということもあるのだろうか、少し寂しい客の入り。人間国宝の吉右衛門や紫綬褒章の芝雀(来春五代目雀右衛門襲名予定)が出るとはいうものの、いわゆる若手の人気筋が出ないのも影響しているのだろうか。
まずは有名な演目「平家女護島・俊寛」。吉右衛門が俊寛を演じる。島流しにあった俊寛らの御赦免での心情を描く。前半少し冗長な感じを受けたが、終盤に向けては必要な前ふりなんだろう。歴史民俗に疎いので、かの時代の島流しというのが実際にどんなだったかは知らないが、極限の状態だけに、俊寛らの狂気みなぎる感情の起伏が見もの。島と大海原、そして迎えの船など、歌舞伎らしい大胆なセットが楽しい。義太夫節の迫力も満点。千鳥に新婚の初々しさは無かったが(笑)。
「太刀盗人」は松羽目物(まつはめもの)。能や狂言のように松の木が描かれた舞台で演じられる。何も考えずに笑うことが出来る演目。愛嬌のある又五郎の仕草が楽しい。
「浮世柄比翼稲妻」は色男の名古屋山三(※人名です)を錦之助が演じる。しゅっとした顔立ちではまり役。劇中では花魁・葛城太夫の見事な衣装と、従者など周辺の風俗が見もの。こういう時代が本当にあったなんて信じられない。笑わせどころもあって、なかなか盛り沢山な内容の話だった。芝雀が女性3役を演じ分ける。それぞれ雰囲気の違う女性だがちょっとエロチックな場面もあり、その演技力というか、存在感を感じさせる。所作が美しいなァ。三段とも出ずっぱりの錦之助と又五郎が大活躍。特に又五郎は悪者役、ひょうきんな役、豪胆な役、どれも見応えがあった。
この日は播磨屋(中村一門)と京屋(芝雀)の共演。派手さは無いが味のある役者ばかり。歌舞伎役者の名前と顔(特に素顔)って、いまだに全然一致しないが、テレビで活躍して誰もが知る役者以外にも、まだまだ面白そうな人がいっぱい居て興味が尽きない。
平家女護島
一、俊寛(しゅんかん)
俊寛僧都 吉右衛門
海女千鳥 芝 雀
丹波少将成経 錦之助
平判官康頼 歌 昇
瀬尾太郎兼康 又五郎
丹左衛門尉基康 歌 六
二、太刀盗人(たちぬすびと)
すっぱの九郎兵衛 又五郎
従者藤内 種之助
目代丁字左衛門 吉之助
田舎者万兵衛 錦之助
三、浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)
山三浪宅
鞘当
名古屋山三 錦之助
傾城葛城/お国/茶屋女房 芝 雀
浮世又平 橘三郎
不破伴左衛門 又五郎
( 金山 名古屋市民会館 御園座 中村吉右衛門 中村芝雀 中村歌六 中村錦之助 中村又五郎 播磨屋 はりまや 京屋 )