ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演 「東海道四谷怪談」「神田祭」 @名古屋市・御園座

2023年10月22日 | 歌舞伎・文楽

片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演 「東海道四谷怪談」「神田祭」(10月17日・御園座)

新しくなってはや5年以上が経つ「御園座」。ただ歌舞伎となるとどうも今ひとつ盛り上がりに欠けているような気がするのはどうしてだろう。先日の刈谷での公演で勘九郎や七之助も話していたが、公演中でも名古屋駅周辺ではアピールに乏しく、伏見の会場周辺でもさほど目立っていないので盛り上がりに欠けていると感じることが多い。そんな冷めた名古屋でも、W人間国宝の仁左衛門、玉三郎の共演となれば話は別。チケットの購入もいつもより大変だった(もちろん完売だとのこと)。今回も老母を連れての観劇。すぐ隣にあるいつものホテルに部屋を取って、会場入りする前に少し休ませ、いざ御園座へ。

 

全公演売切御礼なので観られるだけでもラッキー。今回はネットで粘って粘ってポッと空いた席をゲット。嬉しいことに上手(かみて)の桟敷席。実質8列目ぐらいだし、席の位置が高いので観易くて母もとても喜んでいた。

一幕目の「四谷怪談」はお馴染みの話。でも実際に歌舞伎の舞台で観るのは自分も初めてだと思う。色悪(いろあく・二枚目の悪役)を演じる仁左衛門はもう御歳79歳とは思えない立ち姿。クールな姿と台詞がかっこいいが、酷い人格の役なので憎たらしいのなんの。大して玉三郎のお岩は徹頭徹尾不幸で不憫で悲しい役。化粧も衣装もみすぼらしいが、台詞もいたたまれない。「元の浪宅の場」で終わるのだが、伊右衛門の最後の台詞が「執念深けえ奴だなァ…。」。え、ここで終わり? 調べてみると2年前に歌舞伎座で演った時にはこの後の「本所砂村隠亡堀の場」も上演したが、今回はわざと省いたのだそう(ただしその場面でも人を人とも思わない伊右衛門らの姿が描かれるだけだが…)。何ともやりきれない(苦笑)。

幕間を挟んでもまだ心が晴れないが、二幕目が始まり浅葱幕(あさぎまく)がストンと落とされると、先程まで暗くて侘しかった舞台にはパァッと明るく賑やかな神田明神が出現。極悪人を演じていた仁左衛門がいかにも粋な鳶頭の姿で登場。そして花道から登場した芸者姿の玉三郎の美しいこと美しいこと。さっきまであんなに侘しい姿だったのに…。そのギャップが大き過ぎてすっかりあちらの術中にハマっている(笑)。仁左衛門と玉三郎が絡んで踊るのだが、その所作ひとつひとつがカッコよく、玉三郎が仁左衛門と見つめあってふと明るい表情を見せる所なんざ思わず引き込まれてしまう(さっきはあんなに酷い仲だったのに!・笑)。大きい舞台からの引退を表明している玉三郎だけに、もうそろそろ観る機会は無くなってしまうのかなと思うと名残り惜しい。最後に「松嶋屋!」「大和屋!」と声がかかると割れんばかりの拍手で幕を閉じた。

 


 

一、東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)

 四谷町伊右衛門浪宅の場
 伊藤喜兵衛内の場
 元の浪宅の場
 
お岩          坂東 玉三郎
小仏小平      中村 隼人
お梅          片岡 千之助
按摩宅悦      片岡 松之助
乳母おまき    中村 歌女之丞
伊藤喜兵衛    嵐  橘三郎
後家お弓      上村 吉弥
民谷伊右衛門  片岡 仁左衛門


二、神田祭(かんだまつり)

鳶頭          片岡 仁左衛門
芸者          坂東 玉三郎


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