私は鉄道にくわしいわけではない。だが、鉄道会社がすべての電車を満員にして走らせようとしていることぐらいはわかる。エキナカを次々と開店させるのを目の当たりにすれば、誰の目からみても公共交通機関というよりは単なる営利企業である。JR社員に国鉄時代の役人的威厳や横柄さの面影はかけらも残っていない。
すべての電車を、いつも混雑させておくために行った最初の策は郊外に大学を誘致し 、すいている朝の下り線に学生を詰め込んだことだろう。これは奏功し、郊外へピクニックに行くお年寄りと学生の座席の取り合いが生まれた。最近は少子化の影響で本部が都心にある大学が郊外につくったキャンパスから撤退しつつあるようだ。いったんつくった広大なキャンパスはこの先どなるのだろう。
次なる策は現在進行中でもある延伸事業。私鉄はすでに地下鉄との相互乗り入れをおこなっていたが、JRはこれを自社線どうしをくっつけて行った。こうすると、それぞれのターミナル駅で止まっていた人の流れが、そこを越えて重複するようになる。ターミナル駅は始発駅ではなくなり、並んでも座ることのできない単なる通過駅となった。横須賀線でいえば、東京止まりだったのを千葉の総武線と直通にし、東京以遠の人が東京駅ですでに乗っているようになった。つぎは湘南新宿ライン。埼玉とつながり、いったいどこから乗ってきているのだろうと思うほど、たくさんの人がずっと乗っている。
そして今回の上野東京ラインの開通。はじめは、上野駅と東京駅が、あいだにある3駅を飛ばして直通になっただけのことと思っていたが、あに図らんや、これはもう東海道線だけではなく、東京横浜間を走るほかの2路線、横須賀線と京浜東北線にも多大な影響をもたらした。