病理医は患者さんとは直接顔をあわせることは無いけれど、見えないところでそれぞれの患者さんと深く関わっている。患者さん自身の訴え、主訴があって、それが発端となって病気の診断、治療が始まる。患者さんの体のどこかにしこりがあるとか、見た目がおかしいという場合は、一部を取ってきて調べる、これを生検診断という。外科医、内科医をはじめとして色々な臨床科の医者が病変の一部を取ってきて、病理に持ってくる。そこで、病理医は臨床情報(場所、年齢、性別)をもとに、組織像を顕微鏡でみてその病変の診断をつける。これが病理診断だが、診断がつかない時は一般染色(HE染色)の他に免疫染色を行う。免疫染色というのは病変内にいる、ガン細胞、炎症細胞などの異常な細胞の中にあるタンパク質を探しだす染色で、今日の病理診断の主流となっている。さらに、一部を使って遺伝子の発現を検査するという方法もある。昨日書いた通り、この辺りの新しいタンパク、遺伝子情報も近年飛躍的に伸びている。先日、本庶 佑先生がノーベル賞を取ることになったPD L-1タンパクもそんな新しいタンパク質だ。もちろん、このタンパク質に関わる免疫染色もある。
生検してきた組織を含む病変が、手術で取ることのできる病変であれば、手術切除する。薬で対応すべきものならばそうなる。同じ腫瘍であっても胃癌なら、まずは手術で切除するし、悪性リンパ腫ならば化学療法が行われる。乳癌のように両方を組み合わせることもある。そのような場合、胃癌なら、切除した胃の組織を病理医が癌の広がりや転移の有無を決定する。悪性リンパ腫ならば、化学療法後に骨髄に転移していないかとかそういったことを調べてフォローアップする。乳癌で抗がん剤がちょこうした例であれば、腫瘍が消えて無くなっていることを調べる。
他にも、移植医療、生殖医療など多くの医療に病理医は関わっているのだけど、なかなかそういったことを一般の人に知ってもらうことはない。仕事だから、自分自身の病理医としてのモチベーションが下がるというわけではないのだけど、知名度が低いためにこれから病理の道に進もうという人がなかなか増えないのは残念なことだ。
なんだか、尻切れトンボのような文になってしまったが、臨床とのカンファとCPCの準備があり、今日はこの辺で。
ほかにもいろいろ