岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「浅田訴訟ー65歳で障害者を差別するなー」第4回口頭弁論(2014年5月21日)。

2014-05-23 09:12:52 | 「65歳で障がい者を差別するな」浅田訴訟
2014年5月21日第4回口頭弁論・報告集会がありました。
提訴は2013年9月19日、第1回口頭弁論は2013年11月17日です。
残暑の季節に始まった裁判は年を越え初夏を迎えています。

今年に入り浅田達雄さんは介護保険の認定期間が切れるため、介護保険の更新申請をしました。
その結果、要介護5から要介護4に変更になりました。
「岡山市の基準や職員の説明によるとこれでは支援法の給付は一切できません。浅田さんは昨年に引き続き、岡山市から『死ね』と言われたのです。もちろん、区分変更申請を出しました。結果、2014年5月16日付けで要介護5の判定が出たため来年の3月までは支援法の支給も受けられることとなりました」
呉弁護士の意見陳述書(平成26年5月20日)より引用しました。

1年後には再び介護保険の更新があります。浅田さんの不安な日々はいつまでも続くのです。

 介護保険認定により介護サービス量が変わり、そのため生活を変えざるをえない状態に陥ることはよく知られています。浅田さんの場合は、それが「生死」に関わる生活上の変化となります。
そのことも考慮されることなく、機械的な認定がなされてしまいました。
区分変更申請の結果によっては、「市役所の窓口で座り込もうと考えていた」と浅田さんは話されたそうです。
浅田さんをそこまで追い詰めた「岡山市による運用」です!

裁判が長引くにつれ、この裁判の意義についての再確認が必要と感じています。
もちろん、私自身の問題です。

裁判の意義については原告訴訟代理人、柿崎弘行弁護士による意見陳述書(平成25年11月17日)に書かれています。
その要約版より引用します。

裁判の第一の意義ー障害福祉の実態を明らかにすることー
1.障害福祉と介護保険は、目的も内容も違う制度です。年齢だけを見て介護保険に切り替えろというのは不適切です。自己負担についても大きな違いがあります。障害者を年齢で区別し、高齢の障害者により大きな経済的負担を負わせるのは、どう考えてもおかしいのです。
2.障害者自立支援法7条(現在の障害者総合支援法7条)は、「介護保険でカバーできる範囲は、障害者サービスを提供しない」としています。これが、年齢だけを見て機械的に介護保険の利用を強制するという意味であれば、憲法14条と憲法25条に違反します。
3.むしろ、障害者自立支援法22条は、障害者の特性や生活状況など様々な事情を考えることを求めています。障害福祉と全く同じ条件で介護保険を利用できる場合だけ介護保険にするというのが、この法律の本当の意味ではないでしょうか。今回の岡山市の取り扱いは憲法違反です。仮に、憲法の話は脇に置くとしても、行政機関としてきちんと考えていなかったこと自体が違法です。

裁判の第二の意義ー岡山市の非人道的態度を問うことー
1.当初の決定はサービスの全面打ち切りでしたが、何度も取り消しや変更がなされ、最終的には相当の部分が支給されました。岡山市は、なぜ最初から一部支給の決定をしなかったのでしょうか。
2.浅田さんは、サービスを全面的に打ち切られたために、床に倒れて起き上がれなくなり、下痢で大便を漏らしたり、たいへん苦しみました。後から取り消しや変更がされても、時間を遡ってサービスを受けることはできません。浅田さんの苦しみがなかったことにはならないのです。
3.岡山市は、障害福祉より介護保険の方が市町村の財政的負担が軽いために、65歳を迎えた障害者に介護保険への切り替えを求めているのです。浅田さんは、見せしめのように、サービスを打ち切られました。岡山市だけでなく、全国各地で同じような問題が起こりつつあります。全国の障害者が、今後二度と、浅田さんと同じような苦しみをあじわうことのないようにしなければなりません。

終わりに
2010年、障害者自立支援法違憲訴訟訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との間で基本合意が成立しました。その中で、障害者自立支援法7条の問題点が指摘されています。岡山市がこの基本合意を十分に理解していれば、今回の事件は起こらなかったはずです。裁判所では、厳格な審理が行われるよう、強く要望します。

以上引用しました。

最初に「障害福祉と介護保険は、目的も内容も違う制度です」と書かれています。
第4回口頭弁論では、裁判所から「障害者総合支援法と介護保険法の質的違い」についての説明が原告に対して求められました。
このことを明らかにすることはとても意義のあることです。

障害者総合支援法は、1949年「身体障害者福祉法」以来の長い歴史があります。当事者の方々の運動や活動の成果も反映しています。国際的な障害者運動の成果ともつながっています。
一方、介護保険法は2000年にスタートした法律です。当事者である高齢者が運動や活動をした成果ではありません。
国の主導で出来た法律です。国は高齢者(特に要介護者)は当事者能力がないと思っているように感じます。

上記の二つの法律の質的な違いは、以下の各条文で明らかです。
「障害者総合支援法」はまず基本理念を掲げます。

「障害者総合支援法」(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)の基本理念
法に基づく日常生活・社会生活の支援が、共生社会を実現するため、社会参加の機会の確保及び地域社会における共生、社会的障壁の除去に資するよう、総合的かつ計画的に行われることを法律の基本理念として新たに掲げる。

一方、介護保険法は「目的」から始まります。基本理念はありません。
介護保険法の目的
第一条  この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。


理念と目的の違いは法律の質的な違いと直結します。
介護保険は保険であり「保険給付を通じて国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ること」ことが目的です。
一方、支援法の基本理念には「日常生活・社会生活の支援が、共生社会を実現するため、社会参加の機会の確保及び地域社会における共生、社会的障壁の除去に資するよう」と書かれているわけで、二つの法律は「理念も目的も」異なるのは明らかです。

取りあえず、今日はここまでです。


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