岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

論壇時評「甘えているわけじゃない」よ、曽野綾子さん。高橋源一郎より

2013-09-27 04:23:14 | 日本の仲間
朝日新聞、2013年9月26日・論壇時評より

曽野綾子さんの「出産したら会社をお辞めなさい」発言に対する論壇時評です。

この発言は週刊現代に掲載されていて、私は原文を読んではいない。
だから、「この時代になにをいっているのだろう。場違い、いや時代違いな発言だ」くらいしか言えない。

論壇時評で高橋さんが取り上げたことで、視野が広がったように思う。

高橋源一郎さんや上野千鶴子さん、高橋秀実さんの発言に思いを同じくします。

以下は、朝日新聞デジタルより一部転載しました。

曽野綾子という人が週刊誌で「出産したら女性は会社をお辞めなさい」という旨の発言をして、物議を醸した。曽野さんは「産休」のような「女性をめぐる制度」は会社にとって「迷惑千万」だと否定していた。そして、そういう制度を利用する女性は「自分本位で、自分の行動がどれほど他者に迷惑をかけているのかに気がつかない人」だというのだ。

 ぼくはそれを読んで、そんなのウソだよと思った。だって、ぼくの知っている働くお母さんたちはみんな、悲しいぐらい一生懸命、会社や周りに「迷惑をかけない」ようにしていたからだ。どうして、もっと権利を主張しないのだろうと思っていたからだ。曽野さんはぼくとは違う世界に住んでいるのだろうか。

 曽野さんの発言は、単に、働く女性へのバッシングではなく、すぐに「婦人公論」で上野千鶴子が指摘したように「セクハラ、パワハラ、マタハラと、職場にタブーがどんどん増えて、男が好き勝手できなくなっちゃった。そんなの俺たちイヤだよう」という、潜在する(一部の)男性の考えを、代弁したものに思える。だが、もっと深刻な問題は、曽野さんのことば(と、それを含めた週刊誌の一連の報道)が、いまこの国で噴き上がっているヘイトスピーチと同じ本質を持っていることだ。

 前掲誌で、上野さんは「このやりかたは、生活保護不正受給バッシングとまったく同じ」といった。高橋秀実は「どんな制度でも悪用したり、甘える人はいるものです。だからといってその制度自体が悪いわけではありません」と書いた。在日、生活保護受給者、公務員、等々。彼らへの糾弾は、その中の少数の「違反」者を取り出し、まるで全員に問題があるかの如(ごと)く装ってなされる。

そこでは、彼らの「特権」(があることになっている)が怨嗟(えんさ)の的となり、やがて、およそ権利というものを主張すること自体が敵視されることになるんだ。
 こんなヘイトスピーチやバッシングを行う当事者の多くが、実は、社会的な弱者に分類される人たちであることはよく知られている。妬(ねた)ましいのだ。すぐ近くの誰かが、自分より恵まれている(らしい)のが。悲しいことだが、彼らの気持ちは理解できないことはない。
でも、曽野さんのような恵まれた立場の人が、後輩である若い、働く母親たちを後ろから撃つような真似(まね)をすることは、ぼくには理解できない。


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