ある会社の方たちが人づてに「うちの工場を見学したいと言っている」という情報が伝わってきました。
「この時期に工場見学を希望するということは、見たがっているのは今売り出し中のあの装置かな」
「それだったら挨拶はA部長で説明はあの装置に詳しいB課長に行ってもらわないといけないね」
「じゃあこういう手順で説明をしましょうか」
私にも、「あの方たちが来られるときは立ち会っていただけますか?」という要請があって、「もちろんいいですよ」と請け合ったものの、内心(自分は何をすればいいのかな?)と若干の不安と疑問が。
「工場に来られるのはどこの方たち?」と訊くと「〇〇会社の方たちだそうです」
なんだ、良く知っている会社じゃない。
来られる方たちのリーダーの名前を聞き取って挨拶かたがたその会社を訪ねてきました。
今回の見学のリーダーに会うのは初めてでしたが、人づてに紹介してもらっていたので会うのはスムースでした。
「初めまして、今度見学に来て下さるというのでお待ちしています。ところでこれをじっくり見たいというポイントはどういうことなんでしょうね」
ざっくばらんに聞きつつ「うちの今一番のウリはこの施設なので、それはじっくり説明したいと思っているのですが」というと、先方は「いえいえ、そんな高度な内容をお願いしようとは思っていないんです」という。
「え?」
「実は今うちの会社に入りたての若手技術者の勉強なんです。まだ知識も未熟な彼らに『道路の舗装とはどういうものか』というごくごく基礎的な部分を見せてあげたいと思ったのですが、一番手近なところがそちらさんだったもので、この際お願いをしたということでして…」
なるほど、こちらが自信をもって見てもらおうと思っていた内容は、先方が求めているものとは全く違ったようです。
今日挨拶と営業に来たことで先方の求めるものがしっかり分かったので、早速工場の担当者に伝えて、「これこれこういうところからプレゼンをしたらよいのじゃないかな」とイメージを伝えました。
見学に来るという会社から直接頼まれたわけではなく、人を介した形での情報伝達だったのでこちらの勝手な思い込みもあったようです。
何事も思い込みや不確定な情報で判断してはいけないと改めて気づかされた一件。
これまでの人脈のおかげと、営業活動として先方のニーズを拾おうという一歩突っ込んだ踏み込みが功を奏しました。
その一歩があるかないかで、結果の良しあしも大きく変わります。
コロナのお陰で最近はリモートでの情報伝達の方が良いと価値観も変わりつつあるようで、「営業は足で稼ぐんだろう」などという掛け声は「古い!そんなのは昭和の遺物ですよ」と笑われそう。
でもやっぱり直接人と会って話をすることでわかるという真理は、元号の違いで済まされるような問題ではないように思います。
「会える人には会っておけ」
ある人生の先輩の言葉を思い出した暑い夏の一日でした。