北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

北海道の行方

2005-11-07 23:34:32 | Weblog
 北海道総合開発計画という計画があります。

 実際は道民の皆さんもあまり知らないかも知れませんが、自分の住んでいる土地がどういう有り様に向かっているのかに関心を持っている事は、本当は大事なことです。

 今日は
■北海道総合開発計画 の1本です。

【北海道総合開発計画】
 国には北海道開発法という法律がある。これは昭和25年に公布・施行された法律で、その第一条は「この法律は、北海道における資源の総合的な開発に関する基本的事項を規定することを目的とする」とされている。

 そしてその第二条で北海道総合開発計画について触れている。
 第二条
国は、国民経済の復興及び人口問題の解決に寄与するため、北海道総合開発計画(以下「開発計画」という。)を樹立し、これに基く事業を昭和二十六年度から当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、実施するものとする。
2 開発計画は、北海道における土地、水面、山林、鉱物、電力その他の資源を総合的に開発するための計画とし、その範囲については、政令で定める。

 …ということである。難しく書いてあるが、国は北海道総合開発計画を作って、それに沿った事業を行いますよ、という事が書かれているのだ。

 計画は昭和27年から37年にかけての第1期計画に始まって、現在は第6期の計画に沿って開発事業が進められているのだ。

 現在の6期計画は平成19年までの期間の目標を定めたものだが、そろそろこの目標期限が近づいていて、これを今日的に改訂する動きがあちらこちらで起きているというところである。

 この沿革を見ていると、戦後間もない頃に始められた総合開発計画は経済の発展と共に時代の要請を受けながら今日まで進められてきた事が分かる。

 第一期計画策定当時の開発の目標は「資源開発」の一言であり、主要施策は電源の開発や道路、港湾、河川等の整備拡充、食料の増産ということだった。
 
 それが5年後には開発目標は「産業の振興」となり、昭和38年には「産業構造の高度化」ということに移っている。
 
 いまの6期計画における基本理念と計画の目標は、①国の内外に開かれ自立する北海道の実現、②恵まれた環境や資源を誇りを持って次世代に引き継ぐ北海道の実現、③多様な生活や文化を享受出来る安全でゆとりある北海道の実現、ということになっている。

 たった数十年でよくぞここまで来たものだ、と思うし、その一方で「それでも内地に比べると都市どうしの距離が遠いし、人口密度もまばらで低いので住民サービスには経費がかかる体質はどうしようもない」とも思う。

    *   *   *   * 

 今でも北海道は日本の5%の人口でありながら、公共事業は毎年概ね10%ほどが割り当てられていて、それでもってここまで公共インフラを整備してきたのである。

 しかし昨今、国全体の財政状況が厳しくなるにつれ、こういう状況を逆差別で不公平だ、という論調が強くなりつつある。

 税金の多くは都会で稼ぐのに、再配分と称して地方に手厚く配分されるのは都市住民にとって不公平だ、という意見である。

 これは一面では正しいが、徴税のシステムが都会に有利に出来ているのだから一度都会に集まるのも当然とも言える。

 地方への補助をカットするというのなら、税金の元になる税源も一緒に地方に与えて地方が責任を持ってまかなえるような制度整備をしてください、というのが現在の地方分権の流れである。
 仕事にはお金が必要なのだから。  

 しかしそうすると、再配分という形での調整の効率は落ちるので、地方にとっては諸刃の剣になりかねないのだが、国が再配分調整機能を放棄するのならせめて税源はくれなくては、という論理も分かる。

 北海道も長年、インフラ投資をしてきてかなり良いところまで来たのだが、残念ながら「域際収支」という、北海道が買うものと売るものとの差を調べてみると、平成14年のデータだが、買うものが7兆2千億円に対して売る者は4兆9千億円にとどまっていて2兆3千億円の赤字ということになっている。

 北海道は我が国一番の農業地帯なのだが、いくら農業ががんばっても工業製品などを買う量が多いために、移入が超過している状態なのだ。

 だがこれをもって「だから北海道は自立していない」というのもいささか短絡に過ぎるだろう。大消費地である首都圏や中京、関西から距離があって、歴史的に産業の集積も少ない土地柄であるからだ。

 域際収支をトントンにするということは、国で言えば貿易赤字をなくすということだが、現在の状況は非常に厳しいと言えるだろう。

    *   *   *   * 

 北海道の自立とはどういうことか、新しい定義付けが必要なのかも知れない。

 おりしも、経済財政諮問会議において一部民間委員から北海道開発は名指しで「縮小すべき」と言う事例にあげられてしまった。

 実際に実施している事業やそれに要する人員に関しては誤解もあるようなのだが、いよいよ道民一人一人の自立がなければ現状を維持する事も難しい時代になろうとしているのか。

 帰るところなしと心に決めて、歯を食いしばってこの地を切り開いてきた先人たちの思いにもう一度触れる必要があるかも知れない。


 ちょっと難しい話になったけれど、北海道開発計画を一度でも見てから、明日の北海道を考えたいものだ。

コメント
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