先日ある恒例のご婦人とお話をする機会がありました。
そのお方、病院へ行っていろいろな薬をもらって毎日飲んでいるのだそう。
私は医者ではないので薬の種類や量についてなんの知識もありません。
ですがさすがに量が多すぎるのではないかと思って、「本当にそんなに飲まないといけないんですかね。飲めば個別の症状が改善されるのかもしれませんが、薬を飲むことがかえって苦痛になるようだと、生活全体の質に影響してしまうのではないでしょうか」と感想を述べました。
するとその方は、「まあこれくらいなら飲むのがそれほど苦痛ではありません。ただ…」
「ただ…、なんですか?」
「いずれ体力が落ちて、娘や息子の世話になるかもしれないという気持ちはずっとあって、その時に少しでも健康になるための努力をしていないと申し訳ないという気持ちがあるんです」
「子供さんに対して申し訳ない…と?」
「はい。本当に私の具合が悪くなった時に、子供たちが私を邪険にするのかどうかはわかりません。でもこんな薬でも飲んでいれば、『私も迷惑をかけまいと一生懸命やったんだよ』と言えるでしょう」
「ふむ」
「ところが私が『そんなまやかしみたいな薬なんか飲まないよ、へん』といい加減な態度を取っていたら、子供たちの心のどこか片隅に『母さんは言うことを聞かないから…、ほらみたことか』という軽んじる気持ちが出るかもしれない、それが心配です。だからやった方が良いことはやっておこう。薬も医者が飲みなさい、というのなら飲もうと思っているんです」
その方とお子さんとの関係がどうなのかはよくわかりませんが、私にはそれほど仲が悪いとは感じられませんでした。
しかし歳を取るとだんだん気弱になるのか、とにかく衰えて子供の世話になるときにも精いっぱい頑張ったというポーズを取っていたいという心境が芽生えるのかもしれません。
実際うちの両親は、薬を飲んでいることで安心しているという、自分自身が納得するための薬のような意味合いが見て取れます。
そうなるとこれをまた「そんなの金の無駄遣いだ、やめなさい」とも言いにくい雰囲気が芽生えます。
年寄りの薬が減らないのはこういう心理的一面があるのかもしれません。
なんとか薬に頼らない老後のために、日々の健康に注意いたしましょう。