北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

北海道の歴史を農業・農業団体の歴史として学ぶ

2025-01-21 23:33:03 | Weblog

 

 月に一度、報徳を学ぶ常会が札幌で行われていて、私もできるだけ出席をして学びを深めています。

 常会は、毎回1時間ほどの話題提供者が講話をしてくださりその後意見交換をするという形で進められています。

 先日もその常会があったのですが、今回は会に良く出席される富田義昭さんという方が、ご自身がまとめられた「北の大地の開拓・農業・農業団体の原点と軌跡を探る」という本についての講演でした。

 この本についての講演は三回連続で今回はその最終の三回目でした。

 私自身北海道に生まれ、北海道や開拓の歴史についても人並みには勉強してきたつもりですが、それを開拓の歴史、農業の歴史、農業団体の歴史という切り口で俯瞰した研究成果を初めて見て、正直深い敬意と感動を覚えました。

 一口に「開拓」と言っても、北海道という未開の大地を、日本各地から入植して土地を切り開き、農業を興し、村落を形成し、産物を収穫し輸送し売りさばく、という多くの努力と活動によって一つ一つが成立してきたわけです。

 それを「先人たちの努力で未開の土地が切り開かれて農業を興し今日に至っています」という一言では背景への理解と説明が全く足りないと思いました。

 また、この村落形成や相互扶助の精神を報徳活動が注入して各所でそれが取り入れられた結果として、産業組合設立への道が開かれ、また昭和初期や戦後といった荒廃した時期も乗り越えることができたことも忘れてはなりません。

 
     ◆


 筆者の富田さんは1935年生まれで、北海道庁に入庁されたのちに農業団体に籍を移されて、以来、農業技術に軸足を置きながら、農産物の流通・加工・消費にも関わった活動をされた、と記されています。

 この本では、農産物の「商的流通」「物的流通」「農業倉庫」「農産物検査制度」等の変遷を明らかにし、さらに「土地改良制度」「農業共済制度」「北農かい」などの関連機関の歴史的記録を整理されています。

 そもそも開拓時代初期の農業では、投下できる資本がないために、「仕込み商人」という、産物を安く買いたたく商人が暗躍した時代がありました。

 農家が個別に生産物を作っていたのでは売り先を見つけることも難しく、それゆえ買ってくれるなら安くても仕方なく売るという、豊かさには程遠い労働になることも多かったわけです。

 そういう状況に対して、農業者が団結して協力し合って組織になって金融機能の充実や流通、市場の形成などを一つ一つ乗り越えていった農業団体の歴史などは大いに学ぶ意義があります。

 今日、流通大手は特定の農家さんと直接取引をすることで農産物を安く仕入れて安く提供し、消費者もそれを歓迎するという風潮がありますが、このことが農業者にとって相互扶助の精神で作り上げてきた農業団体のあり方をどのように変えてゆくのか不安もあります。

 著者は「相互扶助の精神が衰えて『今だけ、金だけ、自分だけ』になるのはよろしくない」と述べ、北海道での報徳の育ての親の一人である小林篤一翁が講演で述べた「販売実務者心得」を「示唆に富む」として掲載しています。

 
 今日改めて協同組合の原点に報徳の思想を感じて、農業が強くなることを願います。


 北海道の開拓と農業を考えるうえで一読に値する良書でした。

コメント
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